絵が上手くなるには【正しい知識】で練習をする必要があります。
思うがままに描き続けていたとしても、いずれは上達の限界が来てしまいます。
当記事では、絶対にうまくなるデッサンの基本と【正しい知識】について解説します。
なお、私は漫画家ですので、絵の描き方は線画が中心になります。
美大受験のための生物デッサンや木炭デッサン等の技術に関しては門外漢であるため、当記事では説明しておりません。
ただしメインカルチャー、サブカルチャー問わず絵を描くための正しい知識や考え方は共通しているので参考になれば幸いです。
『自分』を捨てて対象を紙に写し取る!
まず、デッサンの基本とは何でしょう。
対象を見えたままに描くことです。
石膏や静物、あるいは生身の人間などデッサンの対象は様々です。
が、最終的なゴールは対象を紙に写し取ることで、それ以外にはありません。
描いている「あなた」の表現なんてものも、要りません。
描線や量感(マッス)なんてことも言いますが、技術は「あればいい」程度に考えておいていいでしょう。
『観察力』が全てで、対象をどれだけ正確に再現できるかがゴールです。
技術の習得や表現はデッサンとはまた別の課題です。
それとデッサン単体は作品ではありません。すごく乱暴なたとえになりますが、複雑な習字の一種だと私は考えています。
この図は以前イラスト講座で使用させていただいた『絵が上手くなるトライアングル・ルール』です。
※アニメ私塾の室井康雄さんのYouTubeチャンネルより引用させていただいたものを私が図案化いたしました。
このトライアングル・ルールのポイントは自分の好きに描く(ラクガキ)が入っていることです。
デッサン(実写)とアニメ(マンガ)絵の模写は、自分の好きには描けません。
イラストレーターのさいとうなおき氏も『三か月で絵が上手くなる方法』で述べていますが、模写は完全に対象になりきること。
絶対に主観を捨てないと再現できません。
なので「絵が描きたい!」なんて自我をもっている人には、かなりしんどい練習になると思います。
だから自分の好きに描く(ラクガキ)で息抜きをするのですが、
では事項から具体的なデッサンのコツを解説していきましょう。
比率を意識して描こう
対象を単純な形でとらえるのは基本です。
➀細部にこだわらず、まずは全体を単純な形としてとらえて描く。
➁各所を分けてざっくりと形をとる。
➂間を埋めるように細部を描いていく。
ざっと言葉にしてみましたが、これらの順番で描くだけで、デッサンに対する意識が変わります。
手くせなどで最初は上手く描けていない気もするでしょう。
何か納得のいかない仕上がりになるかもしれません。
しかし比率を理解することが上達の早道です。
描けたら元の絵と重ね合わせたりして間違い探しをしていきましょう。
芸術に正解はありませんが、デッサンはお手本という「答え」があります。
元絵と自分が描いたデッサンがそのまんまになるように意識して描き続けましょう。
脳科学ドローイングは有効?
これは全身の描き方を90日かけて学ぶドリル式になった本です。
顔まわりの描き方や全身のプロポーションをブロックに分けて学ぶ構成です。
1日1~2pのノルマをこなしていくことで、90日後には人物の全身絵が描けるようになるというものです。
結論から言えば、かなり有効です。
まずは元絵を見た後、記憶だけでそれを描く。
その後に元絵を見ながら、もう一度描く。
テスト効果を利用した絵の練習法です。
単に情報を聞いたり書いたりするのに比べ、情報を思い出す(検索する)行為をする結果として記憶が強化されることをいう実験心理学の考え方です。
認知科学者のネイサン・ファン・デル・ストーブ博士によると
「何かを覚えようとして、テストをすることで学習プロセスが速くなる」
「脳に何かを記憶させるときに非常に有効な方法」
だと言われています。
デッサンの技術は見ることとカタチを知ることがキモです。
なので技術の習得を「記憶の定着」と考えるのはとても有効な考え方です。
ではルールを説明しましょう。
➀鉛筆と消しゴムを使う(デジタルでもいい)やり直しができるので
➁急がない。まずは丁寧に描く。
※この練習法は脳に疲れを感じる人が多い。疲れきってしまうと学んだことを記憶できない。
➂カンニングはダメ。
記憶だけで描くとき、見本を見てはいけない。トレーシングペーパーもだめ。
④ほんの2、3秒
脳科学ドローイングをはじめるときは、これから描くものの見本をちょっとだけ見る。
基本的に単純な形からはじめて、徐々に複雑な形を描くドリル形式の練習法となっていますので、こちらもおすすです。
人物デッサンに解剖学の知識は必要か?
結論から言えばマンガやイラストの目的は「いかにキャラが魅力的に見えるかどうか」です。
初心者のころは「必須ではないが、あれば説得力のある絵が描ける」程度に軽く考えていいかと思います。
漫画家の菅野博之氏は著書の中で「デッサンは骨格に対してどう筋肉がつくのかが分かると上手くなるの」と書かれています。
また、同著の中て「人物の全身を2000体くらい描けば、その人の人物画は何とか見られたものになるかな」とも。
知ってるつもり(手癖)で描かない
デッサンを行っていて、意外と盲点になるのが手癖で描いてしまうことです。
おそらく絵を描く人にとっていちばん描き慣れているのは人の顔だと思いますが……。
実は自分が知っているつもりの部分は要注意です。
描き慣れているから、つい手癖に引っ張られてしまう。
デッサンをする際、自分の手癖が出てしまったら、どんなに出来栄えがよく感じたとしてもNGだと思うべきです。
特に対象の顔の比率とズレてしまっていたり、間違って覚えてしまう危険性があります。
これを個性と呼ぶかは自由ではありますが、少なくともデッサンのときには個性は意識せずにお手本に忠実な描画を心がけましょう。
球体の影のつけ方
まずは基本的な考え方を描いてました。
グレースケールで描かれていますが、色を変えればフルーツなどにも応用可能です。
人間の肌など球体やブロックとして考えれば
複雑な形も単純化することで
まとめ
絵は正しい方法で練習すれば必ず上手くなると断言できます。
物の形をとらえて正確に描くこと自体にはそこまで才能が必要なものではないと思います。
問題はその先にある「どんな思いで何をどう表現するか」には確かに才能が必要かもしれません。
デッサンはあくまでも筋トレ、野球でいえばホームランを打つための打撃練習と考えてもいいかもしれません。
とはいうものの、私もそれほど多くの練習をしていないので実は絵に苦手意識があるのですが……。
この記事がキッカケで自分でも練習を積み上げていこうと思いました。