こんな方におすすめ
- 主にマンガ・アニメで00年代~10年代にかけての大人キャラの変遷を知りたい方
- 00年代以降のガンダムシリーズの大人キャラをめぐる少し濃い話に興味がある方
- カッコいいオネエキャラにも興味がある人
- 安室透ブレイクについて知りたい方
カッコいい大人とは?
そもそも大人の定義は人によってさまざまです。
当サイトでは、こんな風にザックリと決めてみました。
サトミ流大人の定義
- 社会・物事・人との距離が適切に取れる人((大人の必須条件)
- 困っている人を助ける等、本質的には善人であること
- 考え方に幅があること。清濁併せ呑む、柔軟なこと
00年代のアニメの流れ~地上波の漫画原作アニメから『十二国記』『精霊の守り人』そして今敏監督作品
まずは、00年代の日本のアニメ事情について、ザックリと語りたいと思います。
00年代前半あたりまでは地上波のゴールデンタイムでのアニメが毎日のように放送されていました。
『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』などのファミリー向けの定番シリーズを除けば、地上波ゴールデンタイムに放送されるアニメは有名少年誌の漫画作品が原作となる場合が圧倒的に多かった印象です。
本記事のテーマである「魅力的な大人」については『鋼の錬金術師』『名探偵コナン』に別稿を設けています。
個人的に00年代でもっとも輝いていた「ステキな大人の登場する」アニメ作品は今敏監督作だと思っています。
『千年女優』(02)『東京ゴッドファーザーズ』(03)『妄想代理人』(04)『パプリカ』(06)
味のある良い感じの大人たちが織り成す物語に、心からの称賛を惜しみません。
2010年に46歳という若さで亡くなってしまったのが本当に残念です。
『鋼の錬金術師』は魅力的な大人の宝庫!
漫画で、00年代をけん引した作品といえば『鋼の錬金術師』(01~10年)ではないでしょうか。
二度に渡ってアニメ化もされた大ヒット作です。
少年漫画としての完成度・最終回までカッチリ〆た展開もさることながら、実に味わい深い大人キャラクターが多数登場しております。
子供時代にエドやアルに感情移入して読んだ方も、年を重ねて再読するごとに「大人」キャラクターの魅力に気付いた方も多いのではと思います。
荒川弘氏の大人キャラの面白いところは、シッカリした大人キャラを抜かりなく描いておいて、どうでもいいことにムキになったりする、子供っぽい一面をのぞかせるところです。
キャラクターに深みが生まれますし、リアルに感じられます。
個人的にハガレンの大人キャラはオリヴィエ・ミラ・アームストロング(姉上)と大総統が好きですね。
二次元のキャラと言えども、厳しい大人には身が引き締まる思いです。
『ガンダム』をめぐるリアル「大人」の事情と二次元の大人キャラ
『機動戦士ガンダムUC』は福井晴敏氏の小説(07~09年・全10巻)を原作としたアニメ・漫画作品です。
アニメ版は10年~14年にかけて全7話のOVAとして発売されました。
1stからお馴染みのブライトは言うまでもなく、地球連邦軍のオットー艦長や※レイアム副長、ダグザ中佐など大人のキャラが多数活躍しています。
※この手のアニメで年配の女性が戦艦のブリッジにいるするのはきわめて稀です!
対峙するネオジオン、いわゆる「袖付き」陣営でもジンネマン艦長、ジオン残党で孤高の狙撃手ヨンム・カークスをはじめ、たくさんの魅力的な大人キャラが登場してきました。
私見ながら、メディアミックス作品群「ガンダムUC」の制作意図のひとつは「大人になったガンダムファンに向けた作品」「大人の鑑賞に耐えるガンダム」だったのではないでしょうか。
00年代中頃「宇宙世紀ファン」=1stからZ、ZZを経て逆シャアに経てきたガンダムファンの年齢層は大ざっぱに30~40代以上だったと思われます。
この年代のユーザーをターゲットに、MSV、センチネル等も含めたのホビー誌先行のプラモデル展開とも連動させて進行していったのがバンダイにおける『ガンダムUC』の方向性だったのは間違いないと思います。
大人になったガンダムファンに向けた作品といえば、漫画『機動戦士ガンダムMSV‐Rジョニー・ライデンの帰還』を外すことはできません。
Ark Performance(アーク・パフォーマンス)氏によって伝説のエースパイロット「ジョニー・ライデン」に新しい切り口で描かれています。
特筆すべきは登場人物のほとんどが魅力的な大人で構成されているという点です。
中でも一年戦争時に登場した地球連邦軍のゴップ大将(作中では議長)の「軍官僚として有能」だったという解釈は目からうろこでした。
清廉潔白とはお世辞にも言えない大人たちによる洒脱な会話も、この作品に深みを与えています。
そして『ガンダムSEED』の大ヒットによって、ガンダムファンの二分化、階層化が決定的なものになりました。
「新しい世代に向けた、新たなスタンダードとなりうるガンダム」としてメインターゲットを中学生くらいに設定したと言われています。
結果ガンダムを見たことがないティーンの心に刺さり、久しぶりに商業的に成功したガンダムシリーズとなりました。
この影響で、00年代からガンダムファンは「宇宙世紀モノしか見ない層」と「SEED、00で入った層」に分かれてしまいました。
一方、10年代のガンダム作品で特筆すべき「大人」キャラは、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』に登場したラスタル・エリオンを極私的に挙げておきます。
作中では心理描写も含めて、あまり掘り下げては描かれませんでしたが、間違いなく「大人」なキャラ設定でした。
残念ながら、「オルフェンズ」後半のやや駆け足な展開も含めて、大人の魅力が十分には描かれなかったラスタルですが、個人的な印象ではリアルな大人でした。
表立っては敵を作らないようなスタンスをとる一方、敵対者は手段を選ばずに打ち破る。
ラスタル・エリオンはちょっとだけ、三国志の司馬懿を連想させるところもあります。
『物語シリーズ』「忍野メメ」が退場した理由。日常アニメと大人不在の物語
00年代を代表する漫画・アニメ作品としては、一般層とオタク層の激しい乖離がありました。
アニメ作品では、『化物語』(物語シリーズ)『涼宮ハルヒの憂鬱』『コードギアス反逆のルルーシュ』などがヒットしましたが、一般層への浸透は今ひとつではないでしょうか?
※私はパチンコは全くやらないので、CR『化物語』等をプレイする方がキャラクターに関してどのような思いを抱くか全く想像もできないのですが…
「エヴァ」「千と千尋」「ミニオンズ」ほどの認知度はないと言えるでしょう。
一方で00年代のオタク層に向けたコンテンツに共通するのが、印象に残る大人キャラが少ない、あるいはテンプレ化です。
大人キャラそのものが極端に少ない作品も増えました。
キャラの立った美少女が主役のライトノベルやアニメの視聴者は、渋いオッサンが登場する展開を求めてはいないのでしょう。
そうした市場のニーズが、作者にも少なからず影響を与えているはずです。
アニメ版の「物語シリーズ」は、西尾維新の原作にある膨大なセリフ回しを印象的なカット割りを使って絵で見せたり、背景やモブなどを象徴化する大胆な演出法が印象的でした。
※ヒロインの戦場ヶ原ひたぎの父でさえ、画面にほとんど顔が映っていないような状態で登場します。
物語シリーズでは忍野メメの他にも、臥煙伊豆湖(がえんいずこ)、貝木泥舟(かいきでいしゅう)影縫余弦(かげぬいよづる)といった大人キャラが登場しますが、
キャラクターとしての影響力は限定的と言えるのではないでしょうか。
00年代末~カッコいい大人オネエキャラの登場 『グレンラガン』のリーロンと『ドラゴンクエストXI』シルビアの共通点
00年代~10年代にかけて変わっていったことで、魅力的なオネエキャラの登場が挙げられます。
彼(女?)らは、良い感じの大人ポジションとして主人公を勇気づけたり、たしなめたり、時には保護者のように熱い愛で包んだり…
とにかくこの20年で、魅力的なオネエキャラが主人公側にいる作品はかなり多くなりました。
※オネエキャラの変遷については語り切れないため、別記事にまとめることを検討中です。
『進撃の巨人』の大人キャラについて
10年代にもっとも話題になったマンガ・アニメ作品と言えば『進撃の巨人※』で間違いないでしょう。
※漫画の連載開始は09年ですが、アニメ放送は13年です。
社会現象になったのも10年代からであり、当サイトでは「10年代を代表する作品」と位置付けています。
「進撃」の大人キャラでは、エルヴィン団長やピクシス指令、ハンジさん辺りがパッと思いつきます。
エルヴィン団長はとても魅力的な大人に描かれていますが、他はどちらかというとクセのある大人が多い作品ではないでしょうか。
駐屯兵団のハンネスさんや、グリシャ・イエーガー、ケニー(リヴァイの師匠)、104期訓練兵団のキース教官など…
一筋縄ではいかない大人キャラの内面が描かれています。
安室透『名探偵コナン ゼロの執行人』興行収入100億円達成とクロスオーバーするパロディ
個人的に10年代を語る上で欠かせないと思っているのが、『名探偵コナン』に登場した「安室透」ではないでしょうか。
『名探偵コナン』自体の連載開始は94年であり、アニメ放送も96年からという90年代を代表するマンガ・アニメ作品ではありますが、00年代も安定した人気を誇り、
18年では単行本の総発行部数が全世界累計2億3000万部を突破しているビッグコンテンツです。
安室透の初出は単行本75巻と、比較的後に登場したキャラクターです。
29歳の私立探偵で、毛利小五郎の弟子になる傍ら、喫茶店「ポアロ」でアルバイトしているというキャラクター。
実は黒の組織に所属する「バーボン」というコードネームを持つ人物ですが、その本当の正体は公安警察ゼロ所属の降谷零。
トリプルフェイスの異名を持つ彼はイケメンで頭脳明晰、料理も得意でギターも弾ける完璧超人。
彼が表紙を飾った雑誌には重版がかかり、「降谷」という名字のハンコが売り切れたり、社会現象と呼べるほどの勢いになっています。
安室透のキャラクターデザインは金髪で褐色の肌で美形と、赤毛天然パーマのアムロ・レイとの接点は特にありません。
ガンダムを知る世代には、名前を聞いただけですぐにパロディと分かるキャラクターですが、
昨今の安室透人気をみるとガンダムを全く知らない女性ファンたちも虜にしているのは間違いありません。
メインキャラがほぼ固定した長期連載の少年マンガで、途中から登場してここまでブレイクしたキャラクターはきわめて珍しいケースです。
他に思い当たる例としては『ワンピース』のトラファルガー・ローくらいでしょうか。
しかし社会現象にまでなった点では安室透が初めてのケースではないでしょうか。
安室透のキャラクター性が時代にマッチしていたのは間違いないとしても、当時デビュー連載だった「ハガレン」「進撃」とは状況が違います。
すでに大御所の青山氏の長期連載から、このようなブレイクが起こったことは、純粋にすごいことだと思います。
一方で、安室透の「社会現象」について、マンガ読みとしては少しだけ違和感を覚えるのは気のせいでしょうか。
まとめ
いかかでしたか。
00年代~10年代までのマンガ・アニメに登場する魅力的な大人キャラを、ザックリと語ってみました。
『恋は雨上がりのように』がないじゃないか! 等の反論もあるかとは思いますが、青年漫画の魅力的な大人キャラについては語り尽くせないので、
独自の視点に基づいて各時代ごとの代表的な作品を取り上げました。
個人的には『ふたつのスピカ』の大人キャラについてもガッツリ書きたかったですが、長くなりすぎるので別記事にゆだねます。
なるべく短めにビシッと書くつもりが長くなりました。
いつも長文記事を最後まで読んでいただいた方には感謝しきりです。