この記事は大人について、マンガ描きの考察と主観に基づいて書いたものです。
大人とは?
- 「カッコいい大人」とは何か? 精神的な大人の定義について知りたい方
- 70年代~90年代の漫画・アニメは「魅力的な大人」をどう描いてきたか
あいまいな概念である「大人」について、マンガやアニメを切り口に掘り下げてみました。
大人の定義とは?
いわゆる大人について。
わたしたちは法律的には20歳で成人とみなされます。
よく言われる大人の定義として、社会的自立や経済的自立などが挙げられますよね。
私の個人的な見解ではありますが、これは少し違うんじゃないかと思うんです。
一言で言ってしまいましょう。
大人とは「社会、物事、人との距離感が適切に取れること」
私が知る限りで「大人だなあ」と敬服したのは、他者に対して自然と気遣いができたりするだけでなく、適度な距離感で接することができる人です。
社会的な地位は関係ありません。
※でも、確かにどちらかといえば地位が高い方にステキな大人の素養を持つ人は多いですが、中には本当に…? という人もいますよね。
肩書や収入にとらわれず、自分なりに大人の定義のようなものをまとめてみました。
サトミ流大人の定義
- 社会・物事・人との距離が適切に取れる人(大人の必須条件)
- 困っている人を助ける等、本質的には善人であること
- 考え方に幅があること。清濁併せ呑む、柔軟なこと
この3つがそろっていれば、カッコいい大人と呼んでいいのではないでしょうか?
だらしなくても、経済的に豊かでなくても、家族がいても、家族いなくても、仕事ができなくても、仕事してなくても、大人です!
私はどちらかと言えば厭世的な人間ですが、ひょんなキッカケで「ステキな大人」と出会う機会があると、まだまだ世も捨てたものではないなと思います。
「大人」と言えば選挙ですが、こんな記事も書いてます。
マンガやアニメにおける「大人」なキャラクター
現実ではなかなかお目にかかれなくても、映画やドラマなどでは魅力的な大人はたくさん出てきます。
特に古いハリウッドやヨーロッパ映画などでは男女ともに渋い大人しか出てきません。
一方、日本が誇るマンガやアニメ、ゲーム等のサブカルチャーは(貸本時代・劇画ブームがありましたが)基本的に少年向けの伝統にのっとった文法で作られています。
主人公は、少年か青年(25歳を越えた主人公は稀)がほとんどのケースです。
女性が主人公の作品では尚更です。
漫画・アニメにおいて大人キャラは主に父親・母親として描かれるのが定石でした。
例・『巨人の星』『ドラえもん』『天才バカボン』等…
『ルパン三世』等の例外はありますが、日本のアニメや漫画で「大人」が主役を張るケースは多くありません。
しかし、少年の主人公を導いたり、試練として立ちはだかったりする大人のキャラクターが魅力的に描かれた作品は傑作として高い評価を得る傾向があります。
この記事では主に70年代~90年代にかけての大人キャラの変遷を考察しています。
70年代~80年代の漫画・アニメキャラに見る「大人」ハーロック、ルパン、コブラ、冴羽獠
70年代を代表するアニメと言えば、出崎統監督作品でしょう。
『あしたのジョー』『エースをねらえ!』『ガンバの冒険』『宝島』止め絵を効果的に使った骨太な演出は、劇画調の作画も含めて大人っぽい雰囲気を醸し出しています。
「男のロマン」「年上のヒロイン」を描いた作家と言えば、漫画家の松本零士氏も避けては通れません。
キャプテンハーロック、メーテル、クイーンエメラルダス…魅力的な「大人」を感じさせるキャラクターは、今なお独特の存在感を放っています。
その一方で、タイムボカン(75年)と、後に続くシリーズに出てきた三悪は(※)主人公たちを完全に食う「大人」の人気キャラでした。
また、機動戦士ガンダムシリーズのブライト・ノア艦長も当時子供だった人の視点からは、大人に見えた人も多いのではないでしょうか。
鳥山明氏の大人キャラを語る
90年代~「パトレイバー」の後藤隊長、「エヴァ」のミサトさん? 大人的な空間『カウボーイビバップ』
私見ながら90年代アニメをランキングしてみました。
『機動警察パトレイバー』はメディアミックス作品であり、警察官が主役という、従来のロボットヒーローものとは一線を画した設定が話題になりました。
OVA、劇場版アニメ、漫画版、実写版等、幅広いメディアミックス展開をしたいわゆる「ロボットモノ」ですが、作品の主題は明確です。
「警察という組織内でのはみ出し者たち(=特車二課)が、正義の味方をする話」
「超常現象を出さない、スーパーロボット化しない」
この2点は、80年代アニメのフワフワしたお祭り騒ぎに対する静かなアンチテーゼを含んでいます。
ゆうきまさみ氏の漫画版では特に「プロとしてコツコツ積み重ねた仕事」「職業人としての責任」が、80年代を象徴するようなノリの内海課長や「浮世離れした」バドと対比するように描かれています。
『新世紀エヴァンゲリオン』の大人キャラ
新世紀エヴァンゲリオンのストーリーの謎、キャラ造形に関しては、インターネット黎明期から熱く語られてきました。
本格的に語るとなると膨大な記事になりますので、別稿に譲ります。
『カウボーイビバップ』と大人な雰囲気
余談ではありますが、『ペルソナ2罰』の攻略本に載っていた製作者のインタビュー記事の中で、岡田耕始氏が「大人の定義」について、次のように語っていたのが非常に印象に残っています。
受け入れつつ、かわす
岡田耕始氏による「大人の定義」
『るろうに剣心』は大人キャラか?
ところで、90年代の漫画アニメで大人を語るには避けては通れないのが漫画『るろうに剣心』ではないでしょうか。
主人公・緋村剣心の年齢は連載開始時で28歳と高めです。
しかし、短身痩躯な優男といわれる風貌はカワイイ+カッコいい主人公といった感じです。
「ルパン」「コブラ」「冴羽獠」とは一線を画しています。
人の命を奪わないというポリシーを抱き、活人剣の神谷道場に居候をしながら多くの人々を救っていきます。
少年剣士・弥彦の成長を程よい距離で見守ったり、大人キャラと言ってもいい役割でした。
本ブログの「大人の定義」で考えてみると、どうでしょう?
旧コミックスの「登場人物制作秘話~」などで和月氏が語っているように、
「王道少年マンガとは」「何が読者の心を打つか」「自分が書きたいものへのこだわり」について真摯に考え抜いた末に描かれた表現です。
結果として、作品はヒットし、現在も続編が作られるほどの名作となりました。
色々な方が称賛している通り、OVA『追憶編』の細やかな演出と殺陣のシーンは素晴らしいクオリティで一見の価値があります。
U-NEXTにて、OVA『追憶編』『星霜編』ともに見放題となっております。
まとめ
いかがでしたか?
筆者の個人的な見解に基づく『カッコいい大人の定義』と、マンガやアニメに見る70年代~90年代にかけての大人のキャラクターの年代別の変遷などをざっくりと考察してまいりました。
カッコいい大人については明確な答えがあるわけではないので苦心しました。
00年代~10年代に関しての考察はこちらをご覧ください