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呪術廻戦をヤンキー漫画の文脈で読み解く 呪術のバトル描写にみる不良漫画の系譜

人気マンガ『呪術廻戦』は、呪霊と呼ばれる化け物と戦う(祓う)呪術師の戦いを描いた、ダークファンタジー・バトル漫画です。

荒々しい描線で描かれる迫力のバトル、呪術を扱うため、グロテスクな描写も多く、スリリングな展開がジェットコースターのように展開していきます。

また、力VS力の単純なバトル描写ではなく、領域展開や呪物、術式と呼ばれる能力を使った頭脳戦が派手なバトル描写のスパイスとして効いています。

同系統の作品として、SNSやネット掲示板などでは、『BLEACH』の影響や、能力バトル+頭脳戦の描写は『HUNTER×HUNTER』との比較がよくされています。

しかし、筆者はここであえて『呪術廻戦』をヤンキー漫画の文脈で読み込んでみました。

暴論かもしれませんが、「ヤンキーが激減してしまった時代のヤンキー漫画」という視点で語ってみようと思います。

また、物語の核心部分には触れていませんが、キャラの能力等、ある程度のネタバレ要素を含みます。

アニメ未見の方や原作未読の方は、ご注意ください。

呪術廻戦とはどんなマンガ?

現在進行形で若者を中心に盛り上がっている人気マンガ『呪術廻戦』

原作のマンガは芥見下々氏が2018年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載しています。

アニメーション制作はMAPPAによって手がけられ、20年10月より放送されています。

物語の舞台は現代日本。人間の負の感情から生まれる化け物・呪霊を呪術を使って祓う呪術師の闘いを描いたダーク・ファンタジーです。

凄惨なシーンもあるので、グロテスクな描写が苦手な方には、おススメできる作品ではありません。

いくら大ヒットした漫画といえども、暴力シーンが苦手な方は読まない方が無難です。

 

バトル漫画とヤンキー漫画の親和性

「親和性」とは元は化学用語で「物質同士が容易に結合する性質」という意味です。

言うまでもありませんが、呪いや呪霊をモチーフにした『呪術廻戦』の世界観はヤンキー漫画の世界観ではありません。

しかし、物語構造として、バトル漫画とヤンキー漫画は非常に相性が良く、ざっくりとまとめると以下のような構成になります。

ポイント

・平和な学園に強敵が出現する。

・仲間たちと力を合わせて強敵を倒す。

・敵の目的が明らかになり、次の強敵が現れる。

基本的にはこの繰り返しで、物語が次第にエスカレートしていきます。

『呪術廻戦』の場合、主人公の虎杖に宿る「呪いの王」両面宿儺(りょうめんすくな)が必ずしも味方でない点に読者の予想を裏切る意外性があります。

少年マンガの主人公らしい、正義感が強く弱者を守る虎杖と、人の命を何とも思わない非情の宿儺の関係性が、とてもスリリングです。

では、筆者が『呪術廻戦』にヤンキー漫画との親和性を見たポイントはどこでしょう?

筆者の個人的な見解ですが以下の点にまとめてみました。

ポイント

・荒々しい描線、黒を基調とした画面構成(制服のベタ多め)重い画作り。

・呪術師と呪霊。ともに社会の外にいる存在。アウトロー同士の戦いである点。

・味方同士、敵同士、喫茶店やファミレスでダベっている姿がヤンキー漫画っぽい。

・虎杖と伏黒の掛け合い、憎まれ口と強がりと信頼感が、ヤンキーを感じさせる。

アウトロー同士の戦いという点をちょっと補足します。

主人公たちの通う呪術高専は一応公費で運営されていることになっていますが、社会的には公にされていません。

彼らが卒業後に生業とする呪術師という仕事も、公務員というわけではなさそうです。

呪力をもって呪いを祓う人間という点でも、社会的には圧倒的に少数派となります。

高専の卒業生の七海 建人は一般の証券会社に入社した後に、呪術師の道へと戻った描写を見ると、作者としても明確に一般社会と違うアウトローとして呪術師を位置づけているのではないでしょうか。

筆者はこの、いかにも脱サラ・アウトロー(インテリヤ○ザ?)っぽいキャラ設定の七海を出すことで、五条 悟やサポート役の伊地知 潔高に「大人組」の関係性が際立ったように感じております。

 

また、「大人組」の五条 悟と「最悪の呪詛師」夏油 傑(げとう すぐる)過去編(つまりは学生時代)なども描かれており、この辺りの物語構造と流れが先代の最強番長の物語を連想させてしまうのは、こじつけでしょうか……。

スポーツマンガの本質はトーナメント方式、ヤンキー漫画は縄張り(地元・学校)争い

週刊連載の少年マンガが長年培ってきたノウハウに、トーナメント方式というものがあります。

スポーツマンガでもバトルマンガにも応用が効き、見せ場を作りやすく話も作りやすい王道の展開です。

一方、ヤンキー漫画でトーナメント方式はあまり見られません。

ヤンキーがスポーツするタイプのマンガなら話は別ですが、基本的にはライバル校との争いになるでしょう。

これは昭和時代の番長モノから、80年代のヤンキー漫画の礎となった『湘南爆走族』などを経て、少年ジャンプの『ろくでなしBLUES』少年マガジンの『カメレオン』少年サンデーの『今日から俺は!』そして月刊少年チャンピオンの『クローズ』に至るまで、基本的な物語構造となります。

さて、『呪術廻戦』はどうでしょう。交流会編では、京都校との対戦が描かれます。そこに呪霊の乱入があり、物語は意外な展開を見せます。

本編の十年前の因縁を描いた過去編は、五条悟と夏油傑の学生時代が描かれております。

これが、最強の二人(しかも、はみ出し者!)によるヒロインの護衛という、『今日から俺は!』にも通じる物語展開。

結末はさらに意外な方向に向かってしまいますが。

そして渋谷事変編も、閉鎖された渋谷という空間で、凄惨なバトルが描かれます。

閉ざされた空間でのバトル展開は、『バトルロワイヤル』等に代表される「デスゲームもの」に通じる物語展開です。

このように『呪術廻戦』は、さまざまなマンガ作品の物語構造をクロスオーバーさせながら、意外性のある結末と、さらにそこからの怒涛の新展開に流れていきます。

「読みだしたら止まらない」という人がいるのは、こうした引きの上手さと、既存の物語構造を著者がよく理解し、的確な落としどころを描けるからではないでしょうか。

五条 悟(ごじょう さとる)は伝説の番長ポジション?

作中最強キャラとして知られる特級呪術師・五条 悟。

彼は六眼(りくがん)と呼ばれる特殊な目を持ち、「無下限呪術(むかげんじゅじゅつ)」と呼ばれる術式を使うことで、「無限」を現実に作り出し、周囲の空間にある物体間の距離を自在に操る。瞬間移動や空中浮遊なども可能にする。

この最強キャラをどう扱うか、これも物語を展開させる上でのキモでありました。

ネタバレになるので詳しくは申せませんが、なかなかスリルある展開だったと思います。

ヤンキー漫画でも、主人公よりもさらに強い味方がいる場合、なにがしかのハンデを設けるのは常道ではあります。

伏黒はヤンキー? 一年組のヤンキー感

ネタバレになってしまうので、詳細は濁しますが、徒党を組んでいるようなヤンキーではなかったようです。

中学の頃、ヤンキーを片っ端から「ボコって」シメていたという伏黒は、作中で用務員さんから「問題児」だと言及されています。

とはいえ、一年組のヤンキー感は際立っているように感じるのは私だけでしょうか。

釘崎野薔薇(くぎさき のばら)などは、もはや戦闘民族のような喧嘩っ早さです。

これらの暴力的でありながら、魅力的なキャラクターの描写を見ると、筆者はヤンキー漫画を思い出してなりません。

さらに言うならば、登場人物の個性に合わせてカスタマイズされた制服も、ヤンキーっぽい印象になるような気がします。

まとめ・誰の心にもヤンキーはいる

SNSなどの普及と定着により、誰も本音を語らない時代。

不良文化、およびヤンキーファッションがすたれて久しいですが、呪術廻戦や東京卍リベンジャーズのヒットを見るかぎり、ヤンキー的な価値観はすたれてはいないようです。

特に思春期の少年少女の反抗心と言うのは、実際に現在でも彼女たちの内面にマグマのようにくすぶっているのではないでしょうか。

八十島 小夜子
オカルトとヤンキーは時代が変わっても、若者の心をとらえ続けるのね!
九重 直行
あまり褒められた物じゃないような気もするけどな
十念 絵馬
日本人の根底にある普遍性ですね♪
零乃瀬 知里
ずいぶん乱暴なまとめね
弐重 ねん
最後まで読んで下さって、ありがとうございます

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