スクールカーストとは、学校内での理不尽な序列のことです。
くわしくはこちらの記事にまとめてあります。
スクールカースト 1軍・2軍・3軍 特徴と対策を全軍経験者が分析
クラス内で「そういうキャラ」を強制されると、覆すことが難しい状態になります。
なぜ、そうなったのか歴史的な経緯を考察しているのは以下の記事にまとめました。
スクールカーストの歴史 キャラ的コミュニケーションの成立の経緯を考察
スクールカーストは思春期のとても狭い人間関係と価値観から来る現象です。
社会人になって様々な人間関係を経験すれば自然と視野が広がり、そんなこともあったなと遠い目で振り返ることもあるでしょう。
ですが、マイルドヤンキーに代表される、地方での学生生活から環境を変えないまま大人になった人たちも世の中にはたくさん存在します。
彼らにとっては、生涯をその価値観のまま過ごす場合も多々あります。
そして彼らの狭いコミュニティの中で再生産されることもあり得ることです。
スクールカーストは遺伝するのでしょうか?
親が3軍の場合、やはり子供も3軍なのでしょうか?
結論から言えば、様々な要素で関連すると言わざるを得ません。
その理由をいくつかに分類し、考察してみようと思います。
スクールカーストの源は土着性
たとえば、ルックスもイケてて運動神経も抜群。コミュニケーション能力もそこそこ高い転校生が、必ずしも1軍に所属できるとは限りません。
なぜなら、その人を受け入れる1軍側が拒絶する可能性があるからです。
多くの場合、スクールカーストが起こる以前の小学校時代などから培われた人間関係、カーストの雛形のようなものがベースにあります。
思春期頃になって顕在化しますが、その裏には必ず下地のようなものが存在します。
たとえば中学受験で有名私立に入学した際に、立地が近い有名私立幼稚園や小学校から一緒だったグループがクラスの主導権を握っていたなどという例もあります。
なぜ、このようなケースが起こり得るのか。
それは土着性と呼ばれる、その土地に根差した人間関係が意外と強固であるためです。
本記事のテーマである「スクールカーストは遺伝するか」の答えの一つに、親世代がどれほどその土地に根差しているかも重要な影響力となります。
親の社会的地位もさほど関係ありません。
たとえば親が個人商店を経営しているA君のところに、全国展開しているスーパーの店長をしているB君一家が引っ越してきた場合があるとします。
A君の家庭は決して豊かではありませんが、何代にもわたって地域に根差しており、町内会や夏祭りの実行委員を務めています。
この場合、圧倒的に立場が弱いのは新参者のB君といったケースが多いのではないでしょうか。
B君のコミュニケーション能力やルックス、運動神経なども関連してはいます。
しかし地元に根差した家庭かどうかが、少なからずスクールカーストに影響を及ぼしているのは確かではないでしょうか。
もちろん例外もありますし、都心と地方、新興住宅地、高級住宅街等でも事情は異なってくるかもしれません。
しかし大まかには地元に深く根を下ろした家の影響力は相当にある。
21世紀の日本では見過ごされがちですが、今もなお土着性は続いていると言えるでしょう。
親の性格はどこまで子供に影響を与えるか
性格に関わる遺伝子が親から子に伝わるときは,父親と母親からそれぞれ遺伝子が半分ずつランダムに伝わり,両親のいずれとも異なる新しい組み合わせが生まれますから,遺伝の影響を受けたとしても,どちらかの親と同じ遺伝的素質になるということは絶対にあり得ません。
引用元:公益社団法人 日本心理学会
心理学者で慶応義塾大学の安藤寿康教授によれば、遺伝子が性格に及ぼす影響は約50%、残りの約50%は環境の影響だそうです。
要するに性格は,自分のもともとの素質のうえに,そのときの環境の影響が加わってあらわれ出たものといえます。そこにあなたの努力が加われば,環境によってあなたの素質をより美しく表現することができるでしょう。
前掲サイトより引用
さて、話をスクールカーストに戻しましょう。
親の性格と本人にそれほどの因果関係はないという説を紹介しました。
しかし一方で、スクールカーストとは学生生活上、当てはめられる「キャラ的コミュニケーション」の側面もあります。
本人の性格とは違う役どころを振り当てられ、苦悩するケースも見られます。
そうした場合に、親の地位などがカーストを左右することもあります。
たとえばレアケースではありますが、両親が芸能人だったり、地元の議員だったりする場合、先入観や偏見から「キャラ」を押し付けられるケースもあるのではないでしょうか。
子供の世界は容赦なく残酷でもあります。
カースト上位が継承されるパターン「親子ともにメジャー系運動部」
たとえば野球部で甲子園を沸かせたレベルでなくとも、強豪校でレギュラーだった父親とその息子が二世代以上同地区に土着し、野球部などに所属する場合、カースト上位になる可能性が高いのではないかと思います。
もっとも顕著なのは野球と書きましたが、高校野球の例を見るまでもなく野球文化の土着性は特筆すべきものがあります。
近年「リア充系運動部」として躍進著しいサッカー部とバスケ部ですが、今後の認知度はともかく、野球部に比べたらまだまだの状況だと言わざるを得ません。
春夏の甲子園などは、学生スポーツの範囲に収まり切れないほどの経済効果をもたらしています。
必然的にマスコミ等にも報じられ、他愛もない世間話の題材にもなるほどに人口に膾炙(かいしゃ)していきます。
地方で60歳以上の方と夏に雑談した場合、かなりの割合で高校野球の話題が出る場合が多いのではないでしょうか。
もちろん地域や学区によってはバドミントンや陸上が花形のところ、吹奏楽や卓球が全国レベルの学校などでは、必ずしも野球だけがメジャー運動部とは限りませんが。
近年は縮小傾向にあると言っても、市役所など地方自治体やライフライン系企業の社会人野球など、地方におけるスポーツ文化は本当に根強いものがあります。
そういった意味で、父親が野球部で子供がメジャー系運動部という環境は、学生スポーツにおいて相当なアドバンテージとなるでしょう。
特に地方公務員やライフライン系企業などで地元に密着していれば尚更です。
応援の熱意もすごいものがあります。
スポーツに関心の薄い家庭にとっては、彼らの熱気は相当な圧迫感になるのではないでしょうか。
ひねくれた意見かもしれませんが、スポーツ文化の同調圧力に気圧される人たちも一定数いることもここで述べておきたいと思います。
カースト上位が継承されないパターン(サッカーの苦手な岬君パターン)
逆にメジャー系運動部でもカースト上位にならないパターンも存在します。
それは土着性のない家庭環境から育った子供がメジャー系運動部に所属した場合です。
体格が大きかったり、ずば抜けた運動神経を持っていれば話は別です。
チームメイトの側が快く受け入れてくれるか、本人の周囲との適応力にもよりますが、排他的な運動部というものは確かに存在します。
たとえ両親がカースト上位だったとしても、転勤が多い仕事などで転校を余儀なくされるような場合、子供が疎外感を受けてしまう可能性もあります。
もちろん地域によって転入出入が多いところと、そうでないところがありますので一概には言えませんが。
私の知る限りですと、転校生は10人くらい記憶していますが、カースト上位になったのは1~2人くらいの印象です。
いずれもコミュ強で運動神経抜群でしたね。
それでも、土着性の強いカースト上位グループに引っ張られていった感じです。
サンプルが少ないので何とも言えませんが、スクールカーストと土着性は密接にかかわり合いがあるような気がしてなりません。
見出しに付けた岬君とは有名なマンガ『キャプテン翼』の主要登場人物に岬 太郎というキャラクターのことです。
彼は少年時代に放浪の画家である父親の仕事の都合で転校(50回!)を繰り返していましたが、天性のサッカーセンスと人望、適応力の高さから周囲と打ち解け、
後に日本のフル代表にも選ばれる作中屈指の人気キャラクターですが、残念ながら彼ほどリアリティから遠いキャラクターはいないのではないでしょうか。
オタクの両親だと子供はオタクになるか?
結果的には概ねYESですが、オタクを取り巻く状況が親世代と現在ではまるで違うので単純な比較はできません。
現在ではアニメの声優さんが紅白歌合戦に出たり、ヒットチャートが軒並みアニメソングだったりすることが珍しくない時代です。
駅のポスターなどにも、アニメキャラが描かれていたり、アニメ・ゲーム好きを公言する有名人も枚挙にいとまがありません。
しかし、ちょうど親世代にあたる年代はアニメが好きなだけで「気持ち悪い!」「オタク=犯罪者予備軍」のような偏見の中で出会い、夫婦となった間柄です。
今でいう「オタク」と昔の「オタク」では、侮蔑的なニュアンスに雲泥の差があります。
そのような迫害時代に「オタク」を続け、結婚に至ったカップルにとっては子育ての方針も自己のアイデンティティにまつわる切実な問題です。
結果として、両極端な傾向があるのではないでしょうか。
オタク趣味が子供にバレないように全力で隠すパターン。
オタクエリートとしての英才教育を施すパターン。
両親ともにオタクの場合このどちらかの間になると思われますが、隠したからと言って子供がオタクになるケースもあります。
子供が小さい頃から『ゼルダの伝説』や『涼宮ハルヒの憂鬱』を与えたからと言って必ずしもオタクにならないケースもあります。
なぜでしょう。
やはり家庭環境よりも学校などでの当人の交友関係から趣味が育まれていく場合が多いからです。
そして忘れてはいけないことですが、結婚して親になれるオタクは一般人よりも常識人である場合がほとんどです。
確かにオタクの趣味に費やす情熱は非常識ですが、「オタク=キモい」という社会的な風潮の中で家庭を築けるということは相当に高いハードルを越えてきています。
ヤンキーが「オメデタ婚」をするのとは次元が違います。
例外もいますが基本的にオタクは内向的な人が多いので、おそらく一般人よりも「オメデタ婚」の比率は低いはずです。
男女ともに、「オタクを止めること」も含めて悩んだ末のゴールインだと、子育てを含めて相当に慎重になるオタ夫婦は多いです。
よくある「オタク趣味を捨てた男性」なども現実に相当数いるのでしょう。
女性の場合も同様です。特に女性はより社会的な性質が強いので「オタク趣味を隠し通す」人たちも相当数いるのだと思います。
「子供をオタクにしない育て方」などという話がネット掲示板やSNSで話題になりました。
いま親になっているオタクはともかく、迫害時代を過ごした人たちにとっては賛否はともかく身につまされる話ではあります。
オタクと言ってもコレクターにはじまり考察系、創作系、コスプレイヤーなど相当に広く奥深い底なし沼のような世界です。
さらにジャンルごとに島宇宙のように散在されていますから、
反オタクの是非はともかく、当のオタクたちは相当にまじめに考えているのでしょう。
ですから結果として、子供が至極まっとうに育つパターンが多いように思われます。
オタクでありながらリア充などといった人物に育って、卑屈な両親をたしなめたりするような微笑ましいケースも存在します。
まとめ
スクールカーストは世代を超えて引き継がれるかという問いに関して、想像力と実例を総動員して考察してみました。
個人の資質はありますが、要点としましては、今いる土地にそのご家庭がどれだけ根付いているかにもよると思います。
けっこう見過ごされがちですが、令和時代の今もなお日本社会は泥臭い人間関係に縛られているのではないでしょうか。
インターネットで検索して思うことの一つに、都市型の視点で語られる情報に偏っているように感じられるフシがあります。
確かに人口の半分は都市部に集中し、マスコミ等で語られる情報は都市型のものが大半です。
一方で地方ではまだまだ昭和の価値観がくすぶっているような、そんな印象もあります。
人間や社会はそう簡単に変わらないと言った証左でもありましょう。