総務省の統計では、10~30代に加え、40代でもネットの利用率がテレビを上回ったようです。
「テレビ離れ」は、中高年にまで差し掛かったことが推定されます。
「若者のテレビ離れ」自体は、インターネットが本格的に普及した2005年(平成17年)頃から言われだしました。
08年(平成20年)に当時のNHK会長だった福地 茂雄氏が「若者のテレビ離れ」を課題として取り上げられています。
すでに10年以上前のことです。
その間、YouTubeやニコニコ動画に代表される動画投稿サイトなどの台頭に加え、違法アップロードにも悩まされたテレビ局ではありますが、手をこまねいていたわけではありません。
国内でも在京民放5社が運営する動画配信サイト「TVer(ティーバー)」(15年)や、サイバーエージェントとテレビ朝日が出資したインターネットテレビ「AbemaTV(16年)」で対抗(?)しました。
けれども、現時点ではネットメディアに後れを取っていると言わざるを得ないでしょう。。
一方、「テレビ」をめぐる視聴者の奪い合いでは、米国のNetflix(ネットフリックス)やアマゾン・プライム等の定額見放題のサービスを開始。
こちらはターゲットの層を取り込みつつ、「黒船」として既存のテレビ業界を脅かしつつあります。
このようなせめぎ合いの中、わたしたち視聴者層が紡ぎ出すネット掲示板やSNSでは…
「テレビはつまらない」
「テレビ見ない」
…というような意見が(若干の優越感? とともに)連日連夜投稿され続けてきました。
当時、若者だった世代も30代。続く世代も含め脈々とテレビを目の敵にしている人たちがいます。
彼らはもちろん少数派に当たりますが、その声は大きくネット上のいたるところに散見されます。
本記事は、「若者のテレビ離れ」「中高年のテレビ離れ」「テレビ嫌い」の理由を様々な視点から考察してみました。
地上波テレビは本当に時代遅れなのか?
若者たちのテレビ視聴時間減少傾向にあるといっても、元々の影響力が巨大な上に、高齢者を中心にテレビの力は他のメディアを圧倒しているのが現状です。
電通が19年2月に発表した「平成30年 日本の広告費」によると、ネット広告費は1兆7589憶円。
一方テレビ広告は1兆7848憶円。
ほぼ40億円の僅差ではありますが、この数字だけ見ると、まだまだテレビの凄さは健在です。
おそらく今後数年以内にネットの広告費がテレビ広告費を抜くとは思いますが、
【追記】令和元年にネット広告費、初めてテレビを超える
電通が20年3月11日に発表した「令和元年 日本の広告費」では、ネット広告費は2兆1048億円。
前年比19.7%増で8年連続プラスの数字でした。
これに対しテレビ広告費は1兆8612億円。
前年比2.7%減でした。
電通のコメントによれば「広告業界の転換点となった」そうです。
しかしテレビの構造、ネットの構造自体は本質的には変わらないでしょう。
テレビ番組とは、きわめて少数者の(発信者たち)による多数派(受け手・視聴者)への均一な情報発信が基本です。
民放放送であれば、番組の出資者としてスポンサー企業が入り、それらを仲介する(電通などの)広告代理店があります。
その根拠としてネットで話題になるニュースの元ネタも、かなりの部分でテレビから来ています。
テレビでの影響力の強さは、そのままネット上の情報にも直結します。
実際に、当ブログでも検索上位をとれている「スクールカースト」などのキーワードがテレビで取り上げられると数日間はアクセス数が跳ね上がりますし。
また、スーパーなどでもテレビで取り上げられた商品と書かれたポップ(例・あさイチで話題!等)を目にしたことが何度もあります。
先日、地元にテレビの収録があり、某お笑い芸人※が来たときは黒山の人だかりでした。
※冠番組を持つほどのネームバリューではないものの、たいていの人が知っているであろうお笑いコンビです。
その他、電車内やフードコートなどの中高生たちも、普通にテレビの話題で盛り上がっていたりします。
何かと批判の多い24時間テレビも、高視聴率を出しているようで、まだまだ存在感を示しているのではないでしょうか。
個人的に見聞きした、これらの事実を照らし合わせてみても、意外とテレビはしぶといなという印象はあります。
ネット上での「テレビ嫌い」が主流な理由
ただ、ネットを積極的に活用する層には「テレビ離れ」「テレビ嫌い」は馴染み深いものではないでしょうか。
19年には吉本興業に所属するお笑いタレントの一部による闇営業問題も大きく批判を集めましたが、それ以前からネット上では極端にお笑い芸人に批判的な意見も目立っていました。
少数の偏った意見かも知れませんが、テレビを目の敵にするような人は確かに存在し、SNSやネット掲示板で「テレビ嫌い」を発信しています。
特に00年代から10年代初め辺りにかけて、アンチマスメディアの空気がネット上を覆っていたのは、実感として認識しています。
フジテレビが一時代を築いた80年代後半から00年代中頃あたりのバラエティ番組の手法・演出に対して、当時から賛否両論がありました。
いわゆる内輪ネタ、いじめのような演出、画面の下半分を字幕で覆いつくすワイプ演出……。
※ワイプ演出は日本テレビ系列『世界まる見え!テレビ特捜部』(90年~)が意図的に始めたものが、様々な番組に流用されるようになったそうですが。
面白がる人もいる半面で、これらの演出を嫌う人たちの声もネット上では多く聞かれるようになっています。
世代的にバラエティ全盛期を知っている人たちにとって、ネットはテレビ文化に対する格好のカウンター攻撃の舞台となりました。
テレビドラマがつまらない理由に関しては、こちらの記事にまとめてみました。
皮肉な言い方ですが、テレビは若者たちに「時代遅れ」とバカにされる程度には元気なコンテンツと言えるかもしれません。
アンチも含めて誰もいなくなった時が本当の終りでしょう。
なぜ、お笑い芸人が出ているバラエティ番組は嫌われるのか?
連日テレビで見ない日はないと言って良いほど見かけるお笑い芸人。
彼らがバラエティ番組で果たす役割は多岐にわたり、ひな壇でのにぎやかしからアナウンサーと絡んでの食レポ。
時には体を張った危険なアクションもこなす、番組になくてはならない存在とされています。
しかし彼らの活躍に心からの喝采を送る人は稀…ではないでしょうか?
もちろん個々にファンはいるでしょう。
しかしながら、テレビ視聴者のほとんどは「何となくテレビを見ている」人たちが大半です。
中には家に帰ってさみしいからテレビを見ている人もいるでしょう。
一方で、お笑い芸人を嫌う人たちも一定数います。
具体的な人物は人によって様々ですが、嫌いな芸能人が出ているだけでチャンネルを変える人は少なからず存在しています。
一部のお笑い芸人たちによるタレントへの「イジり」と称する芸風がいじめを連想させるとして反感を持つ人たちもいます。
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たとえば物を壊したり、いわゆるドッキリ企画を仕掛けたりする内容に不愉快になる人も少なくありません。
テレビ番組の大多数が、社交的な人の目線で作られているので、内向的な人にとっては居心地が悪く感じられてしまうケースが多々あります。
なぜバラエティ番組のアニメ特集はオタクの心を逆なでするのか
バラエティ番組などでオタク向けのコンテンツを紹介するときに感じる違和感は、オタクを自認するものならば誰しも感じたことがあるのではないでしょうか。
なぜでしょう?
一言で言い表わすならばテレビ番組は広く薄い一般層に向けて作られているからです。
たとえば「ガンダム芸人集合」などの企画でも、テレビ的には「ガンダムを知らない人たち」にも楽しんでもらいたいために、あまり深い話はできなかったりします。
BSや深夜枠ならまだしも、地上波のゴールデンタイムではマニアックな話も厳しいでしょうから……。
もちろんオタク系コンテンツを紹介する番組で真面目に作られたものもあります。
アニメなどの名場面をテレビで使うためには○秒○○万円みたいなロイヤリティが発生していると言われています。
権利者によって使用許諾を得るのが難しかったり、金額もまちまちであるとも言われています。
この辺りの様々な大人の事情が込み合っているのは知っていますが、当事者ではないので具体的なことは分かりません。
テレビ番組って、そもそも何のためにあるの?
回りくどいですが、とても大事なことなので記しておきます。
テレビ番組の本質は不特定多数の他者に情報や価値観を提供することです。
マス・コミュニケーションとはよく言ったもので、画一的な内容を不特定多数に大量生産するための媒体です。
テレビ番組とはまず、この大原則に基づいた上で、各局の時間帯・番組の視聴率ごとに定められた予算に合わせた「娯楽」「価値ある情報」の提供を主な中身としています。
そのための企画を立て、出演タレントを吟味したコンテンツ作りが日夜行われ、撮影され、放映されて話題になり、よほどの問題作か傑作以外ほとんどが忘れ去られていくのがテレビ番組の宿命です。
「個人が大事、個性が大事」などとマスコミはうたい文句にしますが対象は個人ではありません。
国民の価値観を均一化すること。
コマーシャルの入る民放放送ならばマーケティングでターゲットにしやすい購買層を作り出すために流行や価値観を作っていく。
広告業界におけるマーケティングで用いられる、ターゲットとなる顧客の年齢別区分の名称は以下のように分類されます。
C層 (チャイルドの頭文字) 男女4歳~12歳
T層 (ティーンエイジの頭文字) 男女13歳~19歳
M1層 (Male=男性の頭文字)20歳~34歳の男性
M2層 35歳~49歳の男性
F1層(female=女性の頭文字)20-34歳の女性
F2層 35-49歳の女性
国民を大ざっぱに分類し、ターゲットに合わせた番組作りとタレントを起用し、興味がありそうな商品を紹介する。
このようなビジネスモデルを元に日常的にテレビCM、番組編成、ドラマの企画などが行われているのでしょう。
個人の趣味が多様化する時代になって、大まかな分類では広告がターゲットに刺さらないといったマイナス要因もハッキリしてきました。
J-POPも同様です。こちらの記事もオススメです。
結局テレビ離れを引き起こした原因は「情報格差」?
娯楽や趣味の多様化、ユーチューブ等の登場、ネット配信の普及などインフラ面でテレビを脅かすライバルの存在が続々と登場したことがまず挙げられます。
一方で番組を制作・放送する側でも側放送コード、規制が厳しくなり、刺激的な番組が作りづらくなったこと、放送のマンネリ化などなど、制作側の事情も多々あります。
芸能事務所とテレビ局の力関係の変化で、人気のあるタレントを抱える芸能プロダクションがドラマなどのキャスティングを主導するようになったことも関係あるでしょう。
またメディア自体も少子高齢化、スポンサー企業の購買層の変化などを受け、若者をターゲットにしなくなったことも、「若者のテレビ離れ」に拍車をかけているのではないでしょうか。
あるいは「分かりやすい」展開が一部の層には「わざとらしい」と感じられてしまったり。
視聴者をテレビに出す際の「演出」が「やらせ」のように感じられてしまったり。
「大物俳優」や「国民的アーティスト」は、基本的には新作の出演作や新譜のプロモーションでしか番組に出ないこと…などなど
テレビの約束事などが視聴者にも知れ渡ってしまったことも挙げられます。
ネットによる可視化で、この辺りのカラクリもバレてしまったことも、テレビ離れの一翼を担っている気がします。
これらに加え、SNSの普及によって個人がカンタンに情報発信できるようになったことは、マスメディアの在り方に大きく揺さぶりをかけるほど強い影響を与えました。
まだまだテレビの影響力は強いとはいえ、個人の意見が可視化されたということは大きな転換点といえるでしょう。
これまでも視聴者の意見は番組などで取り上げられていましたが、あくまでも製作者たちによって抽出された意見です。
情報を伝えるテレビ側が主体であることには変わりがありません。
これに対しネット上の意見は、たとえ無名の個人の投稿であろうとも(その気になれば)誰でも見ることができます。
実際には、ほとんど情報の波に埋もれていくのだとしても、です。
巨大資本、スポンサー、マスコミに対し、直に声をあげられることは無意味なように思えて、それまでの流れとは一線を画す出来事のように思います。
あくまでも門外漢の思いつきにすぎないかもしれませんが…。
テレビ離れを引き起こした原因は、ネットを通じての情報の共有により、番組製作者たちの手の内が明るみに出てしまったことに尽きるような気がします。
そして、それに伴う情報格差と時代の流れに対する温度差がテレビ離れの根本にあるのではないでしょうか。
このような時代の空気を若い世代がキャッチしたために、何となく「テレビ離れ」の空気は共有されていき、当のマスコミ関係者たちの姿勢を揺さぶる結果となったのではないか個人的には推測しております。
まとめ
確かに私の身近にいる小学生はスマホでYouTubeばっかり見ています。
ただそのスマホは本人のものではなく、親から一時的に借りたものだったりします。
その周りでは祖父母がテレビをつけっぱなしているので、何となくテレビでやっていることは耳に入っているようです。
現代の「若者」は、実はそこまでテレビ離れしていない実感があります。
子供だけで活動することが多くなる中学生になると、分かりませんが。
それでも以前のテレビの影響が強大でありすぎたので、相対的にはまだまだテレビの影響力はすさまじい。
ただ個人が何の垣根もなく1ユーザーとして情報発信できる時代になって、テレビ制作者が想定しているマス=大衆との乖離が浮き彫りになっている状況が生まれ、広がった。
現在のところ、それだけに過ぎないのではないでしょうか。
たとえば悩んでいる人にとって、「1人で悩まないで! みんなで話し合おう」という答えが必ずしも最善とは限りません。
本を読んだり思案の末に1人で得た問いや答えもまた貴重なものです。
テレビ文化は「人と人との交流」に重きを置きますが、内向的な人にとっては、それが苦痛である時と場合もあるわけですから。
メディアとは縁遠かった人間が、こんなことをサラっと書いて誰かに読まれるようになった時代になった。
ただ、それだけのことです。
可能性は、メディアだけのものではなくなった…ということです。
今後も若者に限らず「テレビ離れ」という言葉は使われ続けていくでしょう。
テレビという大メディアが、どのような変貌を遂げるか予測は難しいですが、10年で消えてなくなるということはないでしょう。
おそらく本質は変えないままでしばらくは残っていくものかなと思います。
ただ、先に述べたような意味で、テレビ番組が娯楽の王様、メディアの中心だった時代は終わったと私は考えています。