タキシードとドレスを着た男女

年代別考察

カッコいい大人キャラ 00年代~10年代のマンガ・アニメ編 

こんな方におすすめ

  • 主にマンガ・アニメで00年代~10年代にかけての大人キャラの変遷を知りたい方
  • 00年代以降のガンダムシリーズの大人キャラをめぐる少し濃い話に興味がある方
  • カッコいいオネエキャラにも興味がある人
  • 安室透ブレイクについて知りたい方

カッコいい大人とは?

そもそも大人の定義は人によってさまざまです。

当サイトでは、こんな風にザックリと決めてみました。

サトミ流大人の定義

  • 社会・物事・人との距離が適切に取れる人((大人の必須条件)
  • 困っている人を助ける等、本質的には善人であること
  • 考え方に幅があること。清濁併せ呑む、柔軟なこと

 

十念 絵馬
大人の定義と70年代~90年代までの漫画・アニメのカッコいい大人キャラについて詳しくはこちらをご覧ください

00年代のアニメの流れ~地上波の漫画原作アニメから『十二国記』『精霊の守り人』そして今敏監督作品

まずは、00年代の日本のアニメ事情について、ザックリと語りたいと思います。
00年代前半あたりまでは地上波のゴールデンタイムでのアニメが毎日のように放送されていました。

十念 絵馬
確か日曜夜に『ワンピース』月曜に『名探偵コナン』火曜に『BLEACH』でしたっけ
零乃瀬 知里
水曜は『ヒカルの碁』木曜は『NARUTO』金曜は『ドラえもん』で土曜は『ガンダムSEED』や『コードギアス反逆のルルーシュ』

 

『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』などのファミリー向けの定番シリーズを除けば、地上波ゴールデンタイムに放送されるアニメは有名少年誌の漫画作品が原作となる場合が圧倒的に多かった印象です。

本記事のテーマである「魅力的な大人」については『鋼の錬金術師』『名探偵コナン』に別稿を設けています。

 

零乃瀬 知里
NHKBSでは『十二国記』や『精霊の守り人』なんて硬派な作品もやってたりね
十念 絵馬
『十二国記』は作品としても大人の視点が感じられ、延王・尚隆(えんおう・しょうりゅう)や桓魋(かんたい)をはじめとして、魅力的な大人が多い作品です
零乃瀬 知里
『精霊の守り人』も主人公バルサを含めて、登場する大人のほとんどが魅力的よね

 

個人的に00年代でもっとも輝いていた「ステキな大人の登場する」アニメ作品は今敏監督作だと思っています。

『千年女優』(02)『東京ゴッドファーザーズ』(03)『妄想代理人』(04)『パプリカ』(06)

味のある良い感じの大人たちが織り成す物語に、心からの称賛を惜しみません。

2010年に46歳という若さで亡くなってしまったのが本当に残念です。

『鋼の錬金術師』は魅力的な大人の宝庫!

漫画で、00年代をけん引した作品といえば『鋼の錬金術師』(01~10年)ではないでしょうか。

二度に渡ってアニメ化もされた大ヒット作です。

少年漫画としての完成度・最終回までカッチリ〆た展開もさることながら、実に味わい深い大人キャラクターが多数登場しております。

 

子供時代にエドやアルに感情移入して読んだ方も、年を重ねて再読するごとに「大人」キャラクターの魅力に気付いた方も多いのではと思います。

 

十念 絵馬
僕はキンブリーが好きなんですよ
零乃瀬 知里
あたしは「傷の男」(スカー)かな
十念 絵馬
やはり知里さんと僕は、物騒なキャラクターに惹かれるようですね
零乃瀬 知里
…ちっ

 

荒川弘氏の大人キャラの面白いところは、シッカリした大人キャラを抜かりなく描いておいて、どうでもいいことにムキになったりする、子供っぽい一面をのぞかせるところです。

キャラクターに深みが生まれますし、リアルに感じられます。

十念 絵馬
ロイ・マスタング大佐とマース・ヒューズ中佐ですね
零乃瀬 知里
ヴァン・ホーエンハイムも飄々としていて魅力的な「大人」よね

 

個人的にハガレンの大人キャラはオリヴィエ・ミラ・アームストロング(姉上)と大総統が好きですね。

二次元のキャラと言えども、厳しい大人には身が引き締まる思いです。

『ガンダム』をめぐるリアル「大人」の事情と二次元の大人キャラ

『機動戦士ガンダムUC』は福井晴敏氏の小説(07~09年・全10巻)を原作としたアニメ・漫画作品です。

アニメ版は10年~14年にかけて全7話のOVAとして発売されました。

1stからお馴染みのブライトは言うまでもなく、地球連邦軍のオットー艦長や※レイアム副長、ダグザ中佐など大人のキャラが多数活躍しています。

※この手のアニメで年配の女性が戦艦のブリッジにいるするのはきわめて稀です!

対峙するネオジオン、いわゆる「袖付き」陣営でもジンネマン艦長、ジオン残党で孤高の狙撃手ヨンム・カークスをはじめ、たくさんの魅力的な大人キャラが登場してきました。

 

零乃瀬 知里
フル・フロンタルつてシャアよりも大人かな? というか醒めてるわよね
十念 絵馬
シャア・アズナブルが「大人」かどうかは一考の余地がありますね

 

私見ながら、メディアミックス作品群「ガンダムUC」の制作意図のひとつは「大人になったガンダムファンに向けた作品」「大人の鑑賞に耐えるガンダム」だったのではないでしょうか。

00年代中頃「宇宙世紀ファン」=1stからZ、ZZを経て逆シャアに経てきたガンダムファンの年齢層は大ざっぱに30~40代以上だったと思われます。

この年代のユーザーをターゲットに、MSV、センチネル等も含めたのホビー誌先行のプラモデル展開とも連動させて進行していったのがバンダイにおける『ガンダムUC』の方向性だったのは間違いないと思います。

 

十念 絵馬
『UC』も、少年が政治的な物語に巻き込まれる形として始まってオカルトで終わるという、ガンダムの王道展開

 

大人になったガンダムファンに向けた作品といえば、漫画『機動戦士ガンダムMSV‐Rジョニー・ライデンの帰還』を外すことはできません。

Ark Performance(アーク・パフォーマンス)氏によって伝説のエースパイロット「ジョニー・ライデン」に新しい切り口で描かれています。

特筆すべきは登場人物のほとんどが魅力的な大人で構成されているという点です。

中でも一年戦争時に登場した地球連邦軍のゴップ大将(作中では議長)の「軍官僚として有能」だったという解釈は目からうろこでした。

 

九重 直行
ゲーム『ギレンの野望』ではゴップは低い能力値だったけどな

 

清廉潔白とはお世辞にも言えない大人たちによる洒脱な会話も、この作品に深みを与えています。

 

九重 直行
まあガンダムファンの高齢化は、それこそ90年代からあったけどな
十念 絵馬
『SDガンダム』『機動武闘伝Gガンダム』は当時の小中高生には好評でしたが、オールドファンには賛否両論があったそうですね
零乃瀬 知里
ガンダムWは美少年5人が主人公で、女性ファンがついたわね

 

そして『ガンダムSEED』の大ヒットによって、ガンダムファンの二分化、階層化が決定的なものになりました。

「新しい世代に向けた、新たなスタンダードとなりうるガンダム」としてメインターゲットを中学生くらいに設定したと言われています。

結果ガンダムを見たことがないティーンの心に刺さり、久しぶりに商業的に成功したガンダムシリーズとなりました。

この影響で、00年代からガンダムファンは「宇宙世紀モノしか見ない層」と「SEED、00で入った層」に分かれてしまいました。

 

零乃瀬 知里
SEEDにはムウ・ラ・フラガやアンドリューバルトフェルド等、魅力的な大人は登場してるけどね

 

一方、10年代のガンダム作品で特筆すべき「大人」キャラは、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』に登場したラスタル・エリオンを極私的に挙げておきます。

作中では心理描写も含めて、あまり掘り下げては描かれませんでしたが、間違いなく「大人」なキャラ設定でした。

残念ながら、「オルフェンズ」後半のやや駆け足な展開も含めて、大人の魅力が十分には描かれなかったラスタルですが、個人的な印象ではリアルな大人でした。

ラスタル・エリオンの模写

ラスタル・エリオンの模写

 

表立っては敵を作らないようなスタンスをとる一方、敵対者は手段を選ばずに打ち破る。

ラスタル・エリオンはちょっとだけ、三国志の司馬懿を連想させるところもあります。

 

十念 絵馬
クランク二尉のような好漢とは対照的な、清濁併せ呑むところがラスタルの魅力ですね

『物語シリーズ』「忍野メメ」が退場した理由。日常アニメと大人不在の物語

00年代を代表する漫画・アニメ作品としては、一般層とオタク層の激しい乖離がありました。

アニメ作品では、『化物語』(物語シリーズ)『涼宮ハルヒの憂鬱』『コードギアス反逆のルルーシュ』などがヒットしましたが、一般層への浸透は今ひとつではないでしょうか?

※私はパチンコは全くやらないので、CR『化物語』等をプレイする方がキャラクターに関してどのような思いを抱くか全く想像もできないのですが…

「エヴァ」「千と千尋」「ミニオンズ」ほどの認知度はないと言えるでしょう。

 

零乃瀬 知里
00年代になると、作品ごとに大人キャラが洗練されてきて、各ポジションごとの役割が明確化したわね
十念 絵馬
『マクロスF』ランカの義兄オズマ・リーは「フラグクラッシャー」として一部では知られていますが、良い大人キャラですよね

 

一方で00年代のオタク層に向けたコンテンツに共通するのが、印象に残る大人キャラが少ない、あるいはテンプレ化です。

大人キャラそのものが極端に少ない作品も増えました。

 

キャラの立った美少女が主役のライトノベルやアニメの視聴者は、渋いオッサンが登場する展開を求めてはいないのでしょう。

そうした市場のニーズが、作者にも少なからず影響を与えているはずです。

 

零乃瀬 知里
『けいおん!』や「ハルヒ」は、極端に大人のメインキャラが少ない作品よね
十念 絵馬
『けいおん!』の山中さわ子先生は大人というより、お姉さんな感じですし
零乃瀬 知里
さわちゃんって呼ばれてるね
十念 絵馬
僕が好きな『ご注文はうさぎですか?』ではチノの父親タカヒロは良い大人ですよ
零乃瀬 知里
物語シリーズには「忍野メメ」(おしの めめ)という大人キャラの見本のような人がいるけど、途中から旅に出てしまったり
十念 絵馬
その辺の距離の取り方が「大人」とも言えるわけで…

 

アニメ版の「物語シリーズ」は、西尾維新の原作にある膨大なセリフ回しを印象的なカット割りを使って絵で見せたり、背景やモブなどを象徴化する大胆な演出法が印象的でした。

※ヒロインの戦場ヶ原ひたぎの父でさえ、画面にほとんど顔が映っていないような状態で登場します。

 

物語シリーズでは忍野メメの他にも、臥煙伊豆湖(がえんいずこ)、貝木泥舟(かいきでいしゅう)影縫余弦(かげぬいよづる)といった大人キャラが登場しますが、

キャラクターとしての影響力は限定的と言えるのではないでしょうか。

00年代末~カッコいい大人オネエキャラの登場 『グレンラガン』のリーロンと『ドラゴンクエストXI』シルビアの共通点

00年代~10年代にかけて変わっていったことで、魅力的なオネエキャラの登場が挙げられます。

彼(女?)らは、良い感じの大人ポジションとして主人公を勇気づけたり、たしなめたり、時には保護者のように熱い愛で包んだり…

とにかくこの20年で、魅力的なオネエキャラが主人公側にいる作品はかなり多くなりました。

 

十念 絵馬
タレントでいえばイッコー氏やマツコ・デラックス氏のポジションですね
零乃瀬 知里
グレンラガンの「リーロン」は熱血キャラが大多数を占める大グレン団の中でも珍しい理知的な人物だったわね
十念 絵馬
リーロンはすご腕のメカニックなのに加えて相手の心情を理解できる隠れ万能キャラです
零乃瀬 知里
一見イロモノっぽいけど、友情に厚かったり、カッコいい見せ場があるのは『ワンピース』のボン・クレーも印象的よね
十念 絵馬
尾田氏は10年代にも「カマバッカ王国の女王イワンコフ」というキャラを登場させています
零乃瀬 知里
どんなキャラ?
十念 絵馬
ボン・クレーとの違いは立ち位置ですね。イワンコフは一時期(インペルダウン編)でルフィの保護者的な立ち位置につきました
九重 直行
それに比べて80~90年代のオカマキャラはネガティブな印象を持たせた人物像が多かった
八十島 小夜子
『北斗の拳』のユダとか『ドラゴンボール』ブルー将軍
十念 絵馬
鳥山氏つながりで『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』シルビアは、問答無用の良い大人でカッコいいですよ。プレイした人なら絶対に納得してくれるはず

 

※オネエキャラの変遷については語り切れないため、別記事にまとめることを検討中です。

『進撃の巨人』の大人キャラについて

10年代にもっとも話題になったマンガ・アニメ作品と言えば『進撃の巨人※』で間違いないでしょう。

※漫画の連載開始は09年ですが、アニメ放送は13年です。

社会現象になったのも10年代からであり、当サイトでは「10年代を代表する作品」と位置付けています。

 

「進撃」の大人キャラでは、エルヴィン団長やピクシス指令、ハンジさん辺りがパッと思いつきます。

エルヴィン団長はとても魅力的な大人に描かれていますが、他はどちらかというとクセのある大人が多い作品ではないでしょうか。

駐屯兵団のハンネスさんや、グリシャ・イエーガー、ケニー(リヴァイの師匠)、104期訓練兵団のキース教官など…

一筋縄ではいかない大人キャラの内面が描かれています。

 

十念 絵馬
ミケ・ザカリアスの「初対面の人間の匂いを嗅いでは鼻で笑う」という変な癖は、よく思いついたというか呆れて感心します
八十島 小夜子
なにそれ…

安室透『名探偵コナン ゼロの執行人』興行収入100億円達成とクロスオーバーするパロディ

個人的に10年代を語る上で欠かせないと思っているのが、『名探偵コナン』に登場した「安室透」ではないでしょうか。

『名探偵コナン』自体の連載開始は94年であり、アニメ放送も96年からという90年代を代表するマンガ・アニメ作品ではありますが、00年代も安定した人気を誇り、

18年では単行本の総発行部数が全世界累計2億3000万部を突破しているビッグコンテンツです。

 

安室透の初出は単行本75巻と、比較的後に登場したキャラクターです。

29歳の私立探偵で、毛利小五郎の弟子になる傍ら、喫茶店「ポアロ」でアルバイトしているというキャラクター。

実は黒の組織に所属する「バーボン」というコードネームを持つ人物ですが、その本当の正体は公安警察ゼロ所属の降谷零。

トリプルフェイスの異名を持つ彼はイケメンで頭脳明晰、料理も得意でギターも弾ける完璧超人。

彼が表紙を飾った雑誌には重版がかかり、「降谷」という名字のハンコが売り切れたり、社会現象と呼べるほどの勢いになっています。

 

十念 絵馬
ちなみにアニメ版の声優は古谷徹氏で、因縁のライバル赤井秀一の声を演じたのは池田秀一氏
八十島 小夜子
あれ? わたしたちガンダム世代にもお馴染みの名前のような…
九重 直行
アムロ・レイと古谷徹を掛けた名前だな
零乃瀬 知里
シャア・アズナブルの声優の池田秀一氏も含めたパロディになってるのか
十念 絵馬
原作者の青山剛昌は元々ガンダム好きで、安室透のキャスティングは池田秀一氏との会話がキッカケだったとか

 

安室透のキャラクターデザインは金髪で褐色の肌で美形と、赤毛天然パーマのアムロ・レイとの接点は特にありません。

ガンダムを知る世代には、名前を聞いただけですぐにパロディと分かるキャラクターですが、

昨今の安室透人気をみるとガンダムを全く知らない女性ファンたちも虜にしているのは間違いありません。

 

メインキャラがほぼ固定した長期連載の少年マンガで、途中から登場してここまでブレイクしたキャラクターはきわめて珍しいケースです。

他に思い当たる例としては『ワンピース』のトラファルガー・ローくらいでしょうか。

しかし社会現象にまでなった点では安室透が初めてのケースではないでしょうか。

 

安室透のキャラクター性が時代にマッチしていたのは間違いないとしても、当時デビュー連載だった「ハガレン」「進撃」とは状況が違います。

すでに大御所の青山氏の長期連載から、このようなブレイクが起こったことは、純粋にすごいことだと思います。

一方で、安室透の「社会現象」について、マンガ読みとしては少しだけ違和感を覚えるのは気のせいでしょうか。

まとめ

いかかでしたか。

00年代~10年代までのマンガ・アニメに登場する魅力的な大人キャラを、ザックリと語ってみました。

『恋は雨上がりのように』がないじゃないか! 等の反論もあるかとは思いますが、青年漫画の魅力的な大人キャラについては語り尽くせないので、

独自の視点に基づいて各時代ごとの代表的な作品を取り上げました。

個人的には『ふたつのスピカ』の大人キャラについてもガッツリ書きたかったですが、長くなりすぎるので別記事にゆだねます。

 

なるべく短めにビシッと書くつもりが長くなりました。

いつも長文記事を最後まで読んでいただいた方には感謝しきりです。

 

-年代別考察