オカルト・ブーム 終わりの始まり
95年に起きた地下鉄サリン事件と、オウム真理教による一連の凶悪犯罪事件の数々によって、テレビ局をはじめとするメディアは、~96年頃までオカルト番組等の自主規制を始めました。
このため、70年代から続いたメディアによるオカルト・ブームはいったん終息します。
オウム以降のオカルト番組 96年~心霊番組の復活
しかし、翌96年には日テレ系列で情報バラエティー番組『特命リサーチ200x』フジ系列では『奇跡体験!アンビリバボー』が放送開始し、超常現象や心霊特集などが組まれるようになりました。
特命リサーチ~は04年まで放送され、アンビリバボーは18年現在も放送されております。
ポイント
オカルトブームとは別に、心霊現象や死後の世界は多くの日本人にとって、何となく心に引っかかる考え方で、科学的根拠がないと分かっていても、霊の存在を信じたり、感じてしまうのではないでしょうか。
心霊番組が衰退した理由については、こちらの記事をご覧ください。
70年~90年代はこちら
ノストラダムスの大予言以降の終末論
ノストラダムスが予言していたという99年7月には、世間を揺るがせる大事件も大災害も起こらなかったこともあり、比較的平穏な日常が過ぎていきました。
それ以降でも『人類滅亡の予言』は時折話題にはなりますが、社会現象になるまでには至っていません。
00年代でもっとも有名な終末論はマヤ文明の暦から解き起こされたという『2012年人類滅亡説』だと思われます。
この「終末論」は世界的には一大センセーションを巻き起こし、それに便乗する形でハリウッド映画化※もされました。
※映画『2012』(2009年 米映画)ローランド・エメリッヒ監督作
00年代のオカルトとは
スピリチュアルブームとは占いや霊感、前世など、それまでも人気のあったオカルトコンテンツを、癒しやセラピー、生活の質や幸福などに主眼を置いて再構築したものと言えます。
神社仏閣などのパワースポットめぐり、ヒーリング、ヨーガ、引き寄せの法則、パワーストーンなど、多元化した中で、自分がいいと思ったものを選択して実践します。
00年代のスピリチュアルブームの特色として、以前よりもソフトで柔らかな印象が挙げられます。
それまでのオカルトでは、おどろおどろしいナレーションや恐怖をあおる文章が目立っていましたが、スピリチュアル分野ではパステルカラーなものが多く、女性をメインターゲットにしていることが見て取れます。
背景には「失われた10年」と呼ばれる日本経済のデフレ不況による影響が考えられます。
就職氷河期、非正規労働者の増加など、これまでの日本型経営からグローバル企業の経営方針に変化したことに対する社会不安も挙げられます。
「自己責任」という言葉が蔓延したのもこの時代でした。
そんな世相によって傷ついた多くの人々が、スピリチュアルに癒しを求めたのかもしれません。
筆者が「引き寄せの法則」を実践した経緯については、こちらの記事をご覧ください。
『ザ・シークレット』は自己啓発、スピリチュアル的な志向を持つ著名な作家や実業家の「引き寄せの法則」に関するインタビューで構成された06年の映画で、製作者でもあるロンダ・バーン氏による同名の書籍もベストセラーになりました。
90年代半ばごろから登場したインターネット。
00年代にかけて加速度的に普及し、さまざまなサービスが生み出されていきました。
インターネットの登場でオカルトはどう変わったか
宣伝、通信、物流をはじめ目まぐるしく世の中の価値観が変わる中、オカルトも例外ではありませんでした。
それまではマスメディア、あるいは宗教団体、秘密結社などによって独占されていたオカルト、怪奇現象などの情報がインターネットによって個人が不特定多数に発信することが可能となりました。
ネット掲示板に出現したタイムトラベラー
未来人ジョン・タイターは複数いる!? 分岐する世界線と世界大戦の危機
月刊ムー公式ウェブより 引用元URL=http://gakkenmu.jp/column/14126/
10年代のオカルト ~SNSでつながる精神世界~
ソーシャルネットワークサービス(SNS)は日本では04年にコミュニティ型の会員制のサービスとしてmixi(ミクシィ)とGREE(グリー)がスタートしました。
08年にはFacebook(フェイスブック)が日本でのサービスを開始、Twitter(ツイッター)、LINE(ライン)、Instagram(インスタグラム)等、10年代にかけて急速に普及していきました。
日本のSNS利用者は7,216万人(普及率72%)、2019年末に7,732万人へ拡大
2017年度 SNS利用動向に関する調査より 引用元URL=http://ictr.co.jp/report/20171011.html
まとめ
○00年代にはスピリチュアルと引き寄せの法則が話題になった。
○オカルトの考察や検証などのサイトで個人が情報を発信できるようになった。
○ネット掲示板に「未来人」が出現し、その予言が話題となる。
○10年代のオカルトの特徴としてSNSによる個人同士つながりと、社会現象との分断化。
追記・私見~00年代~10年代のオカルトについて~
テクノロジーの進化で、オカルト現象の謎が解明されつつある中、オカルトを信じる層はかつてより減った印象はあります。
しかしながら、技術の進歩は必ずしも人類に幸福をもたらさず、社会不安や価値観の分断化によって心のよりどころを失った人々の中には、今もなお先祖の霊やたたり、占いなどに救いを求めるケースも少なくありません。ネットによる除霊ビジネスで高額な料金を請求されたという例も起こっています。
00年代~10年代のオカルトは、インターネットの普及によってメディア主導によるブームから、SNSでの情報の拡散と共感による、ゆるやかなつながりの時代へと移行しました。
現在もSNS上では、オカルトの同好の士たちが、それぞれの輪の中で共感を広げています。
今後、どのようなオカルトが現れるのでしょうか?
いつかの未来に技術的特異点が訪れ、人類に代わってポストヒューマンが文明を担う時代が来たとき、意識を仮想世界にアップロードするような時代が来たとして、そこにオカルトは存在するのでしょうか。興味は尽きません。