Japanese rock I catch

音楽雑記

日本ロック史を振り返り、邦楽ロックはダサい? 問題を考察する

かつては不良の音楽と呼ばれたロックも、社会の評価は時代と共に移り変わっています。

不良、ヤンキーがカッコいいと言われた時代も過去のものになりました。

ロックが持っていた反体制、反骨のイメージも、すっかり時代とは合わなくなってしまったような気がします。

この記事は日本のロック音楽をめぐる歴史を振り返り、若者の価値観の変化を考察したものです。

邦楽ロックの印象はどのように変化していったのか?

日本にはおよそ半世紀以上にわたるロックミュージックの歴史があります。

国民的バンドからソロアーティスト、インディーズバンドまで、数多くのミュージシャンたちが曲を作り、歌い、それぞれの思いを表現してきました。

邦楽ロックは社会からどう見られてきたのでしょうか?

1980年代から10年代まで4つの時代から時空を超えて巡り合ったオカルト研究会による座談会も含めてお楽しみください。

十念 絵馬
みなさんは邦楽ロックに関してどのような印象をお持ちですか?
八十島 小夜子
80年代では、不良の聴く音楽ってイメージがあるワ。横浜銀蝿とかね
九重 直行
90年代だとバンドブームを経てヒットチャートの主役に躍り出た感じだな。全体としては悪い印象はないと思う
零乃瀬 知里
00年代はインディーズレーベルの林立と細分化よね
零乃瀬 知里
あと00年代からロック男子のメガネ率が増える。 不良っぽさは消えていくわね
十念 絵馬
10年代もそうですね。清潔感のあるロックバンドが主流となっています
零乃瀬 知里
CDが売れなくなった時代で、バンドマンはライブや物販を収入の柱にするようになったけど
十念 絵馬
その流れは続いていて、もちろんロックフェスは大盛況なんですけど…
十念 絵馬
ただその一方で「邦楽ロックはダサい」という声も確かに多く聞かれるようになりました
九重 直行
「日本のロックはダサい」って風潮、昔からあったぞ
八十島 小夜子
アイドルの菊池桃子が「ラ・ムー」というバンドを組んだ時、すごく批判されたのよ
九重 直行
ロック好きな奴らって「○○はロック」「○○はロックじゃない」って言い方をするよな
八十島 小夜子
歌謡曲やアイドルに否定的なのよね
九重 直行
洋楽至上主義もあるよな
零乃瀬 知里
00年代になると日本の音楽ファンの洋楽離れが起きる
零乃瀬 知里
いわゆる「ガラパゴス化」ってやつよね
十念 絵馬
10年代になるとミュージャンでも洋楽信仰はほぼなくなりますね。もっとも海外でもロック音楽は衰退しているようですし

合わせて読みたい

十念 絵馬
日本におけるロックの歴史をカンタンに振り返ってみましょう

ロックンロールが日本にやって来た時

黎明期のロックンロールが日本に入って来たのは割と早い段階(1958年頃)だと言われています。

 

元来、新しいものを取り入れるのは早い日本です。

すぐに芸能界に取り入れられ、ロカビリーと呼ばれるジャンルとなりました。

代表的な歌手は平尾昌晃ミッキーカーチス山下敬二郎

彼らは「ロカビリー御三家」と呼ばれ大変な人気を博しました。

 

ちなみに

余談ですが『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌で有名なささきいさお(当時の名称は佐々木功) もエルヴィス・プレスリーのカバー曲でデビューしており、和製プレスリーとも呼ばれていたそうです。

日本は高度経済成長の時代にあって、GS(グループサウンズ)やフォークミュージックなど、 続々と新しいスターが生み出されていきました。

1960年代の世界的な若者文化の興隆の中で、日本でも若者向けの音楽が花開いたのです。

ロック史において60年代はブリティッシュ・インベイジョン(英国の侵略)とも言われた時代です。

ビートルズローリングストーンズレッド・ツェッペリン等の英国のロックバンドが日本でも人気を博し、彼らに追従する形で邦楽ロックシーンは芽生えました。

十念 絵馬
邦楽ロックは洋楽追従から始まったんですね

ロック黎明期の日本。3人のキーパーソン

異論はあるかと思いますが、筆者はこの3人を挙げます。

かまやつひろし(1939-2017)

グループサウンズ「スパイダーズ」のかまやつひろし

ブリティッシュロックのスタイルを自身の楽曲に取り入れ、『フリフリ』『バン・バン・バン』など日本初と言われるロックナンバーを発表しました。

九重 直行
スパイダースムッシュかまやつは、意図的に英国ロックに寄せた曲を書いたんだよな
八十島 小夜子
60年代~70年代の若者の音楽と言えばグループサウンズフォークだったもんね

内田裕也(1939-2019)

内田裕也も日本のロックを切り開いた先駆者の一人です。

「エレキの神様」と呼ばれた寺内タケシとバンド「ブルージーンズ」を結成した後、GSブームが下火になり、商業性が色濃くなる中、よりロックに傾倒するためにヨーロッパを歴訪。

クリーム※やジャニス・ジョプリンなど当時の先鋭的なロックを体験し、自身のバンド活動(フラワーズ等)と並行しながらロックバンドのプロデュース、新人発掘にもより力を注ぐようになりました。

エリック・クラプトン(世界三大ロックギタリストの一人)、ジャック・ブルースジンジャー・ベイカーという実力派によるロックバンド。

 

八十島 小夜子
ロック界の大御所みたいな感じでテレビに出たり、時々スキャンダルにもなったけど、スゴイ人なんだ
九重 直行
エキセントリックな言動が何かと物議をかもした人だよな
零乃瀬 知里
女優の樹木希林さんとのユニークな夫婦関係? でも有名だったわよね
十念 絵馬
希林さんが18年に他界された際には、気落ちした姿をメディアに見せていましたが、その半年後に内田裕也氏も故人となりました

 

フラワー・トラベリン・バンド内田裕也プロデュースによる無国籍サイケデリックバンド。カナダツアーを成功させ、日本のロックバンドによる海外進出のパイオニア的な存在です。

ミッキー・カーチス(1938-)

ミュージシャン、俳優、タレントとしてもマルチに活躍したミッキー・カーチス

自身の音楽活動の傍らロックバンド「外道」のプロデューサーを務め、ハワイの米軍基地で10万人規模のコンサートを開催するなどロック黎明期の立役者の一人でした。

その後も日本のロックシーンにおいて初めて商業的に大成功を収めたバンド「キャロル」のプロデュースを一時期務めたことでも知られています。

八十島 小夜子
キャロルと言えば革ジャンとリーゼントでロック=不良のイメージを定着させたとも言われているけど
九重 直行
解散後、ソロ活動に転じた矢沢永吉氏はロック歌手として成功し、CMにも引っ張りだこだったな
八十島 小夜子
ミッキー・カーチスはロック・ミュージシャンというよりも、もっと大きな枠での「ロックンローラー」だったワ
零乃瀬 知里
俳優や落語家としても活躍したり、マルチな才能の持ち主だったのね
九重 直行
ミッキー氏が映画『スワロウテイル』にも出演していたな
八十島 小夜子
こうしてみると「ロック音楽」と一言で言っても、いろいろな解釈があるのね

近田春夫氏によるロックの定義

十念 絵馬
音楽評論でも名高いミュージシャンの近田春夫によるロックの定義は次のようなものです


「聴いてるだけで警察に捕まっちゃうような音楽が、ロックだと思ってるから」

NHKロック誕生-ニッポンROCK40年-第1夜より
零乃瀬 知里
ロックって権威に対するアンチテーゼやカウンターが出発点だもんね
八十島 小夜子
この頃のロックはダサいって呼ばれてたわけじゃないでしょ
十念 絵馬
70年代まで邦楽ロックはまだ一般的にあまり浸透していない感じですからね

邦楽ロックと言えば、1970年代の「日本語のロック論争」が有名です。

九重 直行
日本語のロックを語る上で「はっぴぃえんど」は外せない」
八十島 小夜子
この人たちは長髪だけど不良って感じではないわね
九重 直行
そりゃあこのメンバーが音楽界に与えた影響はハンパないからな
零乃瀬 知里
渋谷系とも、ロキノン系とも地続きな感じもする

 

これは筆者の個人的な見解ですが、現在多くの人たちが支持する邦楽ロックのスタイルの一つとして、エレキギター中心のバンドサウンド+内省的な歌詞というのが挙げられるのではないでしょうか?

 

十念 絵馬
一方でロック=不良の図式は完全に過去のものになってしまいましたね
零乃瀬 知里
バンド系もタトゥーを入れてたりするけど、本格的に怖そうなのはヒップホップの人かな
十念 絵馬
まあヤンキー=ダサい、という風潮のご時世ですからね
八十島 小夜子
尾崎豊ではないけれど、社会に対する反抗がカッコいいって風潮はあったわね
十念 絵馬
その風潮はほぼ廃れましたね

「ロック=ダサい」と言われるのは80年代から?

零乃瀬 知里
80年代のバンドって髪を逆立てたり、変なメイクをしたり、今見るとかなり微妙じゃない?
八十島 小夜子
…だけどBOØWYの影響力は凄かったわよ
九重 直行
特に90年代前半にかけてバンドやってるやつはBOØWYのコピーやってたし、ヤンキー界隈に与えた影響も凄まじい

BOØWYの影響力についてはこちらの記事をどうぞ。

九重 直行
まあ、確かに奇抜な衣装と髪型のバンドは人を選ぶよな
八十島 小夜子
聖飢魔Ⅱとか?
九重 直行
ニューロティカとかな
零乃瀬 知里
当時のロックは基本的に男の世界だったみたいね
八十島 小夜子
80年代になると女の子だけのガールズバンドがシーンを賑わせたわ

ガールズバンドの歴史については、こちらの記事にまとめました。

十念 絵馬
男女ともに80年代ってロックバンドの衣装が極端にギラギラしてましたね
八十島 小夜子
そういう時代なのよ
零乃瀬 知里
XJapanも最初はカラフルで髪を立てスゴイ感じじゃなかった?

九重 直行
V系は良い曲もたくさんあるけど、なかなかファンを公言できないんだよな
零乃瀬 知里
BOØWYXの方向性と対照的だったのが、『有頂天』のケラリーノ・サンドロビッチが主宰するナゴムレコード
九重 直行
筋肉少女帯電気グルーヴの前身の人生とか。支持していたのは主にサブカル層か
八十島 小夜子
80年代にはナゴムギャルなんて言葉もあったり

90年代 J-POPブームと 「J-ロック」

九重 直行
年号が平成に改まった89年「三宅裕司のいかすバンド天国」が始まり、アマチュアバンドに大々的なスポットが当たった

九重 直行
たまフライングキッズマルコシアスバンプなど、個性的なバンドをスターダムに押し上げたイカ天ブームも長くは続かなかった
零乃瀬 知里
BEGIN人間椅子は長く活動してるし、ブランキー・ジェット・シティの三人のその後の活躍も目覚ましいけど
十念 絵馬
90年代は空前のJ-POPブームでCDが売れに売れた時代ですよね
九重 直行
この頃になるとロック好きの間でもアンチ小室やアンチビーイングなど、めんどくさい派閥ができたな
十念 絵馬
そもそもJ-POPが嫌いという人も出てきたり

零乃瀬 知里
熱狂的なファンがジャンルの違うアーティストを「ダサい」とか「売れ筋」とか叩いたりするのよね
八十島 小夜子
パンクとメタルは仲が悪いワ。87年の某ライブハウス前でモヒカンと長髪が殴り合いの喧嘩してるのは見たことがある
零乃瀬 知里
さすが昭和…修羅の時代
九重 直行
でもクラスの主流グループが好きなアーティストでマウント取ったりするのは普通だった
零乃瀬 知里
90年代だと渋谷系とかHIP-HOPが注目された時代か

90年代の不良文化についてはこちらの記事を参照ください。

「ロックはダサい」と言われる一因に、奇抜なメイクやファッションが挙げられるでしょう。

特に80~90年代のロック界隈のステージ衣装は今見ると「やりすぎ感」があって、余計にそう思えるのではないでしょうか。

青春パンクの影響とファン層

零乃瀬 知里
青春パンクは「青春のダサい感じ、から回る気持ち」をポジティブに歌い上げたものよね
八十島 小夜子
パンクロックといえば、ブルーハーツの影響は大きかったでしょう
九重 直行
90年代半ばのハイスタメロコアブーム青春パンクに強い影響力を与えた
十念 絵馬
10年代になると、下火にはなりますがWANIMA(ワニマ)やヤバいTシャツ屋さんなどが活躍していますね

※青春パンクについてはこちらの記事をご覧ください

ネット時代と邦楽ロックの関係

零乃瀬 知里
何といってもネット掲示板やSNSのおかげで、ファン同士が匿名で交流できるのが大きいわね
十念 絵馬
ネット上での「口コミ」と抜群に相性が良かったのはthe pillowsだったような気がします

零乃瀬 知里
アーティストでもSNSを積極的に利用する派と、そうでない派で二分したよね
十念 絵馬
ファンの交流は盛んになりました。アンチが罵ったり、ケンカもしますけど
九重 直行
対面じゃない分、ファン同士が遠慮なくののしり合える
零乃瀬 知里
そのアーティストの音楽を聴いたことがなくても、叩けてしまうからね
十念 絵馬
ロックフェスのマナーの問題や、ファンの姿勢も問われる時代になりましたよね

まとめ

ロックの歴史を簡単にではありますが振り返ってみました。

2019年現在、ロックがダサいといわれる理由の一つは、それまで一部の若者にあった「反抗心や反社会性がカッコいい」という風潮が時代遅れとなったためであると言えます。

それに加えて「やりすぎ感」のある奇抜なファッションが、時代を経るごとに現在との違和感が大きくなっていくのではないでしょうか。

 

十念 絵馬
邦楽ロックファンの本音がネットを通じて直に伝わるようになったことも影響していますね
零乃瀬 知里
あとはアンチの煽りとかね
八十島 小夜子
ロックに限らず、日本て外国から来た文化を独自のものに変えるのが本当に得意よね

日本の文化とは外圧がキッカケで再構築されてきた文化だと言えます。
少し乱暴かつ大げさな表現に感じられるかもしれませんが…

黒船来航から明治維新に至る経緯を見るまでもなく、仏教の伝来にしても、西洋料理にしても、海外の文化をいち早く取り入れ、世界に遅れまいと自家薬籠中(じかやくろうちゅう)のものにしていきました。

そしてガラパゴス化とも言われるように独自の進化を遂げ、発展するのが特徴です。

 

欧米のロックカルチャーを日本人が大真面目に咀嚼し、反映させ、発展させてきた結果、邦楽ロックという独特の文化になり、今なおヒットチャートに上ったり映画やアニメの主題歌になるなど、輝きを失っていない状態だと言えるのではないでしょうか。

八十島 小夜子
最後まで読んでいただき、ありがとうございました

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