かつては不良の音楽と呼ばれたロックも、社会の評価は時代と共に移り変わっています。
不良、ヤンキーがカッコいいと言われた時代も過去のものになりました。
ロックが持っていた反体制、反骨のイメージも、すっかり時代とは合わなくなってしまったような気がします。
この記事は日本のロック音楽をめぐる歴史を振り返り、若者の価値観の変化を考察したものです。
邦楽ロックの印象はどのように変化していったのか?
日本にはおよそ半世紀以上にわたるロックミュージックの歴史があります。
国民的バンドからソロアーティスト、インディーズバンドまで、数多くのミュージシャンたちが曲を作り、歌い、それぞれの思いを表現してきました。
邦楽ロックは社会からどう見られてきたのでしょうか?
1980年代から10年代まで4つの時代から時空を超えて巡り合ったオカルト研究会による座談会も含めてお楽しみください。
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ロックンロールが日本にやって来た時
黎明期のロックンロールが日本に入って来たのは割と早い段階(1958年頃)だと言われています。
元来、新しいものを取り入れるのは早い日本です。
すぐに芸能界に取り入れられ、ロカビリーと呼ばれるジャンルとなりました。
代表的な歌手は平尾昌晃やミッキーカーチス、山下敬二郎。
彼らは「ロカビリー御三家」と呼ばれ大変な人気を博しました。
ちなみに
余談ですが『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌で有名なささきいさお(当時の名称は佐々木功) もエルヴィス・プレスリーのカバー曲でデビューしており、和製プレスリーとも呼ばれていたそうです。
日本は高度経済成長の時代にあって、GS(グループサウンズ)やフォークミュージックなど、 続々と新しいスターが生み出されていきました。
1960年代の世界的な若者文化の興隆の中で、日本でも若者向けの音楽が花開いたのです。
ロック史において60年代はブリティッシュ・インベイジョン(英国の侵略)とも言われた時代です。
ビートルズ、 ローリングストーンズ、レッド・ツェッペリン等の英国のロックバンドが日本でも人気を博し、彼らに追従する形で邦楽ロックシーンは芽生えました。
ロック黎明期の日本。3人のキーパーソン
異論はあるかと思いますが、筆者はこの3人を挙げます。
かまやつひろし(1939-2017)
グループサウンズ「スパイダーズ」のかまやつひろし。
ブリティッシュロックのスタイルを自身の楽曲に取り入れ、『フリフリ』『バン・バン・バン』など日本初と言われるロックナンバーを発表しました。
内田裕也(1939-2019)
内田裕也も日本のロックを切り開いた先駆者の一人です。
「エレキの神様」と呼ばれた寺内タケシとバンド「ブルージーンズ」を結成した後、GSブームが下火になり、商業性が色濃くなる中、よりロックに傾倒するためにヨーロッパを歴訪。
クリーム※やジャニス・ジョプリンなど当時の先鋭的なロックを体験し、自身のバンド活動(フラワーズ等)と並行しながらロックバンドのプロデュース、新人発掘にもより力を注ぐようになりました。
※エリック・クラプトン(世界三大ロックギタリストの一人)、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーという実力派によるロックバンド。
フラワー・トラベリン・バンド=内田裕也プロデュースによる無国籍サイケデリックバンド。カナダツアーを成功させ、日本のロックバンドによる海外進出のパイオニア的な存在です。
ミッキー・カーチス(1938-)
ミュージシャン、俳優、タレントとしてもマルチに活躍したミッキー・カーチス。
自身の音楽活動の傍らロックバンド「外道」のプロデューサーを務め、ハワイの米軍基地で10万人規模のコンサートを開催するなどロック黎明期の立役者の一人でした。
その後も日本のロックシーンにおいて初めて商業的に大成功を収めたバンド「キャロル」のプロデュースを一時期務めたことでも知られています。
近田春夫氏によるロックの定義
NHKロック誕生-ニッポンROCK40年-第1夜より
「聴いてるだけで警察に捕まっちゃうような音楽が、ロックだと思ってるから」
邦楽ロックと言えば、1970年代の「日本語のロック論争」が有名です。
これは筆者の個人的な見解ですが、現在多くの人たちが支持する邦楽ロックのスタイルの一つとして、エレキギター中心のバンドサウンド+内省的な歌詞というのが挙げられるのではないでしょうか?
「ロック=ダサい」と言われるのは80年代から?
BOØWYの影響力についてはこちらの記事をどうぞ。
ガールズバンドの歴史については、こちらの記事にまとめました。
90年代 J-POPブームと 「J-ロック」
90年代の不良文化についてはこちらの記事を参照ください。
「ロックはダサい」と言われる一因に、奇抜なメイクやファッションが挙げられるでしょう。
特に80~90年代のロック界隈のステージ衣装は今見ると「やりすぎ感」があって、余計にそう思えるのではないでしょうか。
青春パンクの影響とファン層
※青春パンクについてはこちらの記事をご覧ください
ネット時代と邦楽ロックの関係
まとめ
ロックの歴史を簡単にではありますが振り返ってみました。
2019年現在、ロックがダサいといわれる理由の一つは、それまで一部の若者にあった「反抗心や反社会性がカッコいい」という風潮が時代遅れとなったためであると言えます。
それに加えて「やりすぎ感」のある奇抜なファッションが、時代を経るごとに現在との違和感が大きくなっていくのではないでしょうか。
日本の文化とは外圧がキッカケで再構築されてきた文化だと言えます。
少し乱暴かつ大げさな表現に感じられるかもしれませんが…
黒船来航から明治維新に至る経緯を見るまでもなく、仏教の伝来にしても、西洋料理にしても、海外の文化をいち早く取り入れ、世界に遅れまいと自家薬籠中(じかやくろうちゅう)のものにしていきました。
そしてガラパゴス化とも言われるように独自の進化を遂げ、発展するのが特徴です。
欧米のロックカルチャーを日本人が大真面目に咀嚼し、反映させ、発展させてきた結果、邦楽ロックという独特の文化になり、今なおヒットチャートに上ったり映画やアニメの主題歌になるなど、輝きを失っていない状態だと言えるのではないでしょうか。